第13章 〜持てるものこそ与えなくては 後編〜
【───まずは、呪具となった壺の点検については許可が出ました!既に祓われたとはいっても、一度呪いの受け皿になった代物ですし疑念を集めさせるわけにはいきません】
「だろうね。言葉や想いは物に在り様を与えてしまう」
【そのとおりです!殺人現場の穢れは酷うございますからね、それが壺や主様に害を及ぼし兼ねません!なのでくれぐれもご注意下さい山姥切長義様!】
異様に甲高くて機械音じみた声が、受話器越しに長義へ政府の意向を伝えてくる。その声の正体というのは、政府に仕える管狐たる『こんのすけ』だ。各本丸に一匹必ず存在し、榊本丸は雄の管狐である
「無論だとも。了解したよ、すぐに主に報せる」
それだけ言うと端末の電話を切った長義は、足早に麻衣達の元へと戻った。すると目暮達は発見者である男性と女性に事情聴取をしており、麻衣達は少しだけ離れた場所でコナン達の一行と並ぶように待機していた
しかし、子供達の様子はバラバラであった。容姿も中身も幼い三人組は警察の様子を心配そうに見つめていて、灰原は阿笠と共に三人に付き添っている。だが、その一方でコナンと沖矢の二人だけは、歯痒そうに唇を噛み締めて現場の方を見ていた
「(……おや、あの二人は我武者羅に首を突っ込んでいくタイプだと思ってたんだけど。流石にあんな厳しく釘をさされちゃ無理もない話だね)」
長義は二人を見つめながら、通話中に耳に届いた麻衣の言葉の数々を思い出す。概ね子供達の危険行為を優しく叱り、正しい成長を促す発言だったのだが。警察側に放った注意が一番の決め手だろう。探偵になるには公共機関への申請が必要なのだ。コナンも沖矢も子供達の手前、我慢せざるを得なくなった。しかし、長義はそれで同情なんてしない。大事な規則を破る事は大罪であるし、そもそも犯罪は警察が取り締まるものである。とは言え、現場に駆けつける度胸は『優』だと思った
「やぁ、随分待たせて悪かったね。彼方に話を通して壺の検査許可が降りたよ」
「そうですか。ご苦労様です長義」
麻衣の元に戻ってすぐ、簡潔に結果を述べると労いの言葉が返ってきた。コナン達の視線が横から注がれるが、敢えて無視して爽やかな笑みを崩さない。そこへ佐藤が無事に確認を終えたらしく、手帳を持って駆け寄ってくると問題なく済んだ事を伝えてくれた