第3章 〜全てはここから始まった〜
と言って、悟りを開いた冷やかな台詞がピシャリと話を打ち切ってみせた。更に続く他三名も「ああ、それは確かに…」と頷いて同意し、話題が直ぐに終了した。その様子は、善悪問わず好奇心旺盛で遠慮なく詰め寄るコナンと違い、思考が何処か達観していて余裕がある様に伺える。人生相談が得意なタイプだ。矢張り、伊達に麻衣の連れは見目が子供でも、何百年の長い年月を刀剣に宿って過ごしていない
そう、彼らの正体は人に在らず、人間の身近で時代を乗り越え人の想いが刀剣に宿した『付喪神』───『刀剣男士』と呼ばれる存在だ。そして、その刀剣男士に主と呼ばれた麻衣の仕事は『巫女』と『審神者』である。
審神者というのは、『古代の神道の祭祀において神託を受け、神意を解釈して伝える者』だ。元々、麻衣は政府が保護する由緒正しい巫女の家系で、古くから血筋が神社を引き継ぎ時の権力者と国を支えた。なので榊家は信頼が厚く、政府が極秘と定めた依頼で審神者になるのは最早宿命。顕現させた付喪神達とは、主従の関係で共生し乍ら、歴史改変を目論む遡行軍との戦闘を乗り越え、家族の様に過ごしている
その為、付喪神達は外に出ても『榊家の巫女と護衛の従者』として、家柄を使った立ち位置のままに麻衣に慈愛と忠誠心を注いで守護する
「では、ここからはわだいしゅうせいです…!このあと、あるじさまはきっさてんをでて、どこにいくよていですか?」
話題が変わると、普通の声量で剣が麻衣に問いかけた
「一応、決めてるのはショッピングモールですね。お店が一杯ある場所なので、それなりに楽しむことが出来ます」
「おお〜、いいな!そこに最新の驚きはあるか?!」
微笑して答えた麻衣の言葉で、勢いよく食いついた国永がいた。彼は机にその身を大きく乗り出して、期待にその目を輝かせている。さながら子供のようなはしゃぎっぷりは、麻衣をクスクスと笑わせた。口元を片手で覆う仕草で、優雅に上品な笑顔をせる
「ふふふ、きっとある筈ですよ。何があるかは行ってからのお楽しみで───」
ブーーーッ! ブーーーッ!
「「「……!」」」
麻衣の言葉を遮るように、机に置かれたスマホが震えた。
通知は電話の着信の知らせで、画面に書かれた相手の名前に全員が大きく目を見開く