第13章 〜持てるものこそ与えなくては 後編〜
決して自虐ではなく、当然のように自分を評する肥前。彼は「今更凹んじまうほど繊細じゃねぇ」と言うが、子供達を始め全員が気まずそうに顔を背けていた。怒鳴るわけでもなく肥前は続ける
「だがな、好き勝手言ってもいいが話は別だ。まるでクイズみたいに当てずっぽうで人殺し扱いされちゃ誰でも腹が立つ…。しかも十歳もいかねぇガキときた」
「うっ…、そんなじゃないもん!今までだって色んな事件を解いてきたんだから!」
「おう、オレ達は少年探偵団なんだ!!」
「たしかにボク達は酷いことを言いましたけど、遊びでふざけてるわけじゃありませんよ!」
「ちょっ……おめぇら!」
すると、心外とばかりに言い返し始めた三人組にコナンが再び止めに入っていく。肥前の方は不可解そうに「少年探偵団だ?」と聞き返すのだが、それに答えたのは何と麻衣だった
「恐らくシャーロック・ホームズという書物の人物達ですね。主人公のホームズに協力していた子供達がそういう風に名乗っていました」
「え、麻衣さんホームズの話知ってるの?!」
「はい。ですが、あの作品はあくまでフィクション…。時代も、国も、法律も、文化も、全てが現在の日本と違う世界の物語です」
「……どういうこと?」
麻衣の落ち着いた声音で、その場の険悪な雰囲気が消えた。しかし今度は続いた言葉でコナンが眉間に皺を寄せた顔になる
「つまり、あの小説はあくまで空想なのです。貴方達の家族や先生、ここにいる刑事達や近所にいる大人達は、子供が事件に関わっていくのを知ってどんな反応をしていますか?」
「!それは……」
「……危険だから止めなさいって怒られてます。それに子供が知るようなことじゃないって、追い出されました」
「だけど、俺たちだったらどんな事件も簡単に解決してきたんだぜ?」
「そうだとしても、全て満足のいく結果だったでしょうか。今みたいに検討外れな推理で迷惑をかけたことがある筈です。思い通りの行動が出来なかったり、みんなで怖い思いをしたり、大小色んな危険に遭遇したり、ともに傷ついて泣いたり、誰かが命の危機に瀕する事も、それで家族や友人達を悲しませてしまった事だってあるでしょう?」
「「……」」
彼女は他の大人と同じく頭ごなしに怒鳴る事はせずに、まるで気持ちに寄り添う様な穏やかな口調で訴えかける