第13章 〜持てるものこそ与えなくては 後編〜
「だから最初に南海さんが持ってた風呂敷をお兄さんが持ってるんだね!中には何が入ってるの?」
「ん?ああ、さっきの質問は少年だったのかい?今では特に奇妙な事もないし普通の高級な壺だよ」
急に視界の下で足下にいたコナンから問われ、不思議そうにしながらも答えた長義。奇妙な事とは、恐らく曰く付きと言われた所以の話だろう。すると目暮が念のために風呂敷の中身を確認したいと言った
「実は被害者の死因が撲殺でして、ぜひとも中身の確認をさせてほしいんですが」
「……それは流石に俺たちだけの判断じゃ頷けないね。あくまで俺は依頼者の代理で受け取りに来ただけにすぎないんだよ。今から電話で指示を仰いでも?」
「え、ええ…お願いします」
目暮はてっきり、仲の良さもあって長義が麻衣に依頼を頼んでいたと思い込んでいた。それは全員が同じだったようで、目を丸くして瞬かせる。そうして電話のために長義が離れていくと、子供達がこそこそと小声で囁き合うのをコナン達が耳していた
「ねぇ、元太くんと光彦くんは誰が怪しいと思う?」
「うーん…ボクとしては遺体を発見していた男の人が一番怪しいと思います」
「そうかぁ?オレは目つきの悪い肥前って奴が犯人だと思うぞ?」
「ああ?!」
「「ひっ…」」
しかし、如何やら肥前本人の方にも声が聞こえていたらしい。彼がドスの効いた声で凄むと子供達は小さく悲鳴を上げた。子供達は身を寄せ合って涙目で怯えており、慌てて気づいた刑事達とコナンと沖矢、阿笠が間に入っていった
「まぁまぁ、落ち着いて下さい!あくまで子供達の言葉ですし…」
「そ、そうだよ!悪気はないから怒らないであげて!」
「何も貴方が犯人であると、まだ確定させているわけではないですから!」
順に沖矢とコナンと千葉からそう言われるも、まだ不機嫌そうな肥前に怒りを収める様子はない。と言っても、別に彼は自分が犯人であると疑われる事自体に怒っているわけじゃなかった。己の存在そのものが人を斬るための道具であって手段なのだ
ならば、如何して肥前が腹を立てているのかと云うと、子供達の態度にあった。さすがの麻衣と南海も微妙な顔になる
「別に俺は疑われることに苛立ってんじゃねぇよ。目つきが悪いってのも生まれつきで自覚してんだ、普通に接する物好きなんざ仲間達ぐらいだろうぜ」