第13章 〜持てるものこそ与えなくては 後編〜
「私は事件に関わった人間として、気にかかった事を挙げただけです。むしろ出しゃばりすぎたと思ったりもしましたが、そう言ってもらえて何よりです」
微妙に顔色が悪く無表情にそう言い切ると、麻衣はベンチから立ち上がって高木達に一礼する。その言動は相も変わらず奥ゆかしいし優雅だ。とても命の危機を感じさせる殺気を放った従者を侍らせている存在には見えない。どう見ても穢れを一切知らぬ、綺麗さしか伺えない巫女だ
護衛達の過保護具合から見ても、恐らく強ち間違いでもないだろう。彼女の殊勝すぎなまでの言動は好意的なものだが、沖矢は微妙な思いで麻衣達を見つつ事情聴取を聞く
「それでは、麻衣さんがこの公園に来てからのアリバイを話していただけますか?お隣と後ろの方も名前と麻衣さんとの関係、公園の中での行動を教えて下さい」
「今日は実家の仕事で、護衛を二人連れて公園に来たんです。私の後ろにいる男性に会うためでした。一人で行動した事はありません」
「そんで俺は肥前忠広。細けぇ説明はしねぇが公務員でNAME1#嬢の護衛でもある。自販機で飲みもん買った時以外は連れと離れてねぇ」
「私は南海尊(なんかいたうと)と言う。肥前くんと同じく公務員兼麻衣嬢の護衛を務めているよ。私が彼女達と離れた事はないかな」
「最後は俺だね…。俺の名前は長船長義、同じく麻衣嬢に仕えるしがない政府の公務員さ。と言っても、俺の場合は彼女と離れて仕事をしてね、今日は彼女の実家の神社に依頼していた物を返してもらいに来たんだ」
四人がそれぞれ証明手帳を掲示しながら、自分達の事について明かしていく。しかし手帳は閉じられたままで、誰もが中身を見ることが出来なかった。そこで佐藤が以前と同様手帳を四人から預かり、目暮に目配せした後パトカー内に駆け込んでいった
「確認が済み次第に手帳をお返しします」
「ええ、構いません」
「それじゃあ聴取に戻りますね…。神社への依頼とおっしゃってましたが、その内容を聞かせてください」
「それは曰く付きだと言われる骨董品のお祓いだよ。今日はその品物を届けに来たんだ」
再び始まった聴取で仕事の話になり、南海が如何と言う事なく答えた。曰く付きとは、えらく胡散臭い話だと思いながらも、コナンは件の品物に見当がついていた