第12章 〜持てるものこそ与えなくては 前編〜
二人の質問に最低限で答えながらも、自分達を見つけた彼らの遭遇率と観察眼には困って苦笑いになった。これにはコナンも同感なのか、「あはは…」と空笑いを返した
「実はさっき、麻衣さんの隣のお兄さんが自販機の前にいるのを偶々見かけて…。そしたらここに麻衣さんといたから、声をかけちゃったんだ」
「そうでしたか」
肥前を怪しんで灰原に怒られた事は、流石にコナンも非を感じたため反省しつつ自然に誤魔化す。それに麻衣が納得した様に頷いたと同時に、怒った様子の子供達が駆け寄ってきた
「ちょっとコナンくん!これから遊ぼうって時に勝手にいなくならないでくださいよぉ〜」
「昴の兄ちゃんもだぞ!」
「(げっ…)」
面倒なことになった。そう言いたげにコナン達を追ってきたらしい、三人の子供達と老人を慌てて振り返ったコナン。沖矢もすぐに気持ちを切り替え、「すいません」とすぐさま謝る。そして子供達の視線は、コナン達の後ろにいる麻衣達へと向かう。肥前を捉えた瞬間、またしても「ひいっ」と小さな悲鳴を上げた。そんな中で一人だけ遅れて歩いてきた少女、灰原は呆れた眼差しでコナン達を見た
「まったく、江戸川くんが勝手に何処かへ行くのはいつもの事だけど、いい年した大人まで子供の面倒を放ったらかして逸れないでくれないかしら?」
「わ、悪かったよ…」
子供らしくなく冷ややかな言葉を浴びせる灰原に、余計申し訳なくなったコナンが頭を掻いて素直に謝った。その姿がいつも以上に弱々しくて、灰原は思わず怪しみながらコナン達の後ろにいる麻衣達に視線を向けた。そして、
「……っ?!!」
麻衣を見た瞬間に、目を見開いて顔を強張らせた。灰原は異常なまでに動揺するが、しかしその瞳に写るのは恐怖というより別の何かに絶望したもの。それにコナンと沖矢が眉を潜める後ろで、唖然とした掠れ声が呟いた
「……志保、ですか?」
「(なっ……?!)」
「!!」
聞こえた女性のものらしき名前に、沖矢とコナン、そして阿笠までもがヒュッと息を詰まらせて硬直してしまう。一方の子供達は「…え?」とキョトンとしており、肥前と南海の二振りは灰原をジッと見つめている。すぐさま我に返ったコナンは、麻衣に慌てて詰め寄った