第12章 〜持てるものこそ与えなくては 前編〜
そんな事を灰原が思っているとは知らず、コナンは不機嫌そうに幼い顔を歪める
「……なんだよアイツ。別にあそこまで言う必要はねぇだろ」
そんな不満を人知れず呟きながら、自販機の方を振り返るコナン。そこではちょうど男がお茶を3本も買って、公園内に入ってくるところを目撃した。きっと一人ではあの本数を飲まないだろうし、連れが中にいる筈だ。さっと全体に目を走らせて、一番奥のベンチに座る、男女二人組を発見した。自販機の前にいた男もそちらの方は向かっている。ところがその内の一人で、女性の方はコナンが先日会ったばかりの人物だった
「(マジかよ、麻衣さんの知り合いだったのか……?!)」
コナンが声もなく驚いたその時、少年の異変に気づいた沖矢が視線の先を追ってメガネの奥で糸目を見開いた
*
「ほらよ、先生とアンタの分だ」
「ありがとう肥前くん」
「ありがとうございます」
肥前は自販機でお茶を買い終えると、すぐさま二人に手渡した。そしてボトルのキャップを開けると二、三口飲んだ。喉の渇きを潤す彼の横で、麻衣は自身の着ける腕時計の時刻を見た
「……もうすぐ時間になります。使いの誰かが来る頃でしょう」
「いつもバラバラだから、今日は誰が来るのだろうね」
「さぁな」
一応彼らの本丸にも担当の役人がいる。しかしそれは名ばかりと言っていい。色んな人間が麻衣達の元に助力を求めてやってくるのだから。果たして此度はどんな人間が来るのか。お茶を飲みつつ待っている麻衣達の傍に、二人の人間が歩み寄る
「麻衣さん」
「……お久しぶりです」
そう言って声をかけたきたのはコナンと沖矢だった。ぎこちない笑顔の少年と、微妙に憮然な表情をしている青年。南海と肥前はそれに怪訝そうな顔をするが、取り敢えず様子見を決めて無言でいた。麻衣も彼らの態度には触れず、愛想の良い挨拶で微笑んだ
「どうも。お久しぶりです」
「麻衣さんも遊びに出かけているの?」
「いいえ、神社の仕事で少し依頼を受けてまして」
「神社の依頼?もしやお連れの方が持ってる風呂敷包みに関係が?」
「そうです。しかし、よくこの広い公園内で奥側にいる私達を発見できましたね」