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第12章 〜持てるものこそ与えなくては 前編〜
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それを聞いて遽に信じがたい話だなのが、コナンがそんな嘘を吹き込む筈もなかった。しかし出来れば彼らと遭遇したくないし、沖矢自身に悪意を持っていた自覚はあったが大事な仕事のためでもあった。おかげで身震いするほど恐怖もしたが、それによって彼女達が正義を掲げる同志で特殊な立場にある事を改めて理解できた。かと言って仲間であるとは思わないし、敵意を持たれた自信しかなく苦手意識と罪悪感に苛まれた
そして、そんな話題の後にやって来たのが『この日に灰原も公園で遊ぶから来るか否か』というものだ。返事は是以外なかった。その結果灰原と玄関先で鉢合わせ、現在子供達とともに公園で合流を果たした。肝心の彼女に怪しまれているものの、沖矢には守る使命があった。そうしていざ来てみたが、何と入り口で早速気がかりな人物を見つけた。そこでチラリと足元に視線をやれば、コナンも自販機の前に立った赤いジャージを着ていて、黒髪の目つきが鋭い男を見つめている
「……ちょっと、どうしたのよ貴方達」
「え?いや、ちょっと自販機の前の男が気になってよ…」
「はぁ?」
灰原に声を顰めて問われ、いつものように直感で怪しむコナンが答えた。思わず灰原は素っ頓狂な声を上げるが、自販機の方へ視線を移すと一層軽蔑の視線でコナン達に振り返ってため息を吐いた。子供達はそんな話をしていると知らず、いつの間にか博士とともに先へ進んでいる。三人もゆっくり中の方へと歩き始める
「はぁ…、たしかに見た目は悪者っぽいわね。だけどそれで人を疑うのは偏見じゃない?彼が悪事を働く所なんて見てないでしょう?」
「うっ…それはそうだけどよ…」
「ですが、コナンくんの勘は大概的確ですし」
「だから何よ。根拠もないまま印象だけで誰かを悪者扱いするのが正しいのかしら?意外と悪い人じゃないかもしれないじゃない。今までだってそういう勘違いはいくらでもあったでしょう?いい加減そういう悪癖無くさないと碌な事にならないから。それに」
「……んだよ。それにの続きは?」
二人して鋭すぎる指摘に何も言い返すことができず、言葉に詰まった灰原をコナンが唇を尖らせる不満げな顔で促した。しかし、彼女はその続きを話すことなく「何でもないわ。とにかく他人の汚点探しはやめなさい」と言って阿笠達に駆け寄っていった
「(あの男の人、なんか既視感あるのよね…)」
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