第2章 光明という少女
ふと気づけば周りの客は殆ど店を出て、残るは一行のみ。
机の上を片していく綾達を見て
「もう閉められるんですか?」
と心配する八戒をよそに、
「この後からバーになるので今はその準備中です」
と、詳しく聞けば宿泊客以外は一度出て行ってもらう仕組みになってるようだ。
「なら、僕達も一度戻りましょうか」
「俺、もー眠いぃ。はわぁ。」
「ガキかてめーわ。じゃーねー綾ちゃん」
最後まで綾にちょっかいを出す悟浄に光明の目が光る。
そして準備も整い夜が更けていけば、始め静かだった宿が次第に賑やかになり煩わしくない程度の音楽が宿に響く。
悟空は眠りにつき、悟浄は外を出歩きと皆思い思いに部屋で過ごし、八戒はと言うと部屋で読書をしていたものの、下から聞こえてくる歌声が気になりバーを覗きに行く。
「おや?珍しいですね」
するとそこには先客が。
三蔵がカウンターで珍しく酒を嗜んでいた。
「いらっしゃいませ」
綾に声をかけられると同じものをと頼み、三蔵の隣に座る。
「三蔵の事ですからもう寝てるかと思ってました」
少し馬鹿にした物言い、
「こういうのは興味がないのでは?」
「・・・たまにはな」
そう言ってグラスを口に運ぶ三蔵。
八戒は自分の分が来ると綾に
「先ほど歌われてたのは綾さんですか?」
と訊ね
「私はあんなに上手くないですよ」
と苦笑される。
「いつの間にか音楽好きが集まるようになってこの形になりまして」
おかげで旅人が居なくてもやっていけてると話す綾。そう話し出してからしばらくして、
「つかぬことをお聞きしますが、昼間、町で綾さんとコウメイさんの関係を耳にしました」
と八戒がきりだした話に目を開く綾。
「おい」
「あなただって気になってるじゃないですか」
と三蔵とのやり取りに綾は少し話にくそうに、けれども作業を続けたまま話し出した。
「光明とは血の繋がりはありません。」
綾が幼い頃、光明とその兄が、宿屋を営んでいた両親に光明だけを預けていったそうだ。