第2章 光明という少女
「凄いのねあなた」
と驚くと蒼は顔をすりよせてきて、一人と一匹は気があったのだ。
別に綾達が嫌だった訳ではない、けれども当時はなかなか慣れなくて、居場所がないように思えていた。
(蒼に乗って帰った後は忘れられない程怒られたなぁ)
と、帰ると夫婦達に異様に怒られた。
その様子が妙に心に残り、それをきっかけに兄を追うことをやめ、待つことに徹し、同じ家族の一員としてやってきた。
それでもいつしか会えるだろうと期待をこめて兄の言う通り、目印にとついた師匠の光明と言う名を相変わらず使っている自分。
「どしたのコウメイ?光明?」
はっとすれば、どちらで呼べばいいかを迷っている悟空。
「どちらでも大丈夫よ」
と返し、その後は悟空に包丁での皮剥きの指導をしつつ二人仲良く料理の下ごしらえ。
昔は東の方に住んでいた事、
綾とその旦那である義兄が怒ると怖い事、
頼れる弟が別で住んでる事を楽しそうに話す光明に、悟空も悟空で寺で暮らしていた事、
三蔵が酔うと面倒くさい事、
悟浄がちょっかいをかけてくる事、
八戒が怒るのが一番怖い事など、
他愛ない話で盛り上がり
「僕は怒る時にしか怒りませんよ」
「「わっっ!」」
と二人夢中で話していたところに八戒がやってきて同時に驚く。
その様子を楽しげにしながら
「そろそろ夕飯を頂こうと思いまして、探したんですよ悟空」
と八戒。
「ごめん。なんか話してたら夢中になっちゃって」
「もぅそんな時間!?大変、大変!」
と光明が周りを片付ける。
「悟空が剥いたやつと光明さんが剥いたやつがどれかすぐに分かりますね」
と皮の厚みの種類に
「で、上達していく過程が見えますね。」
と笑えば
「ありがとう悟空」
と一緒に光明も笑いながら礼を言う。
「なんだか複雑だ」
そして、そう拗ねる悟空は剥いた野菜を厨房まで運ぶ手伝いをして食堂へ向かって行った。
そんな悟空の後ろ姿を見て光明もよしっと気合いを入れて厨房に戻り、ホールに出ては目まぐるしく駆け回る。
「あーーー!お腹いっぱいだぁぁ!」
「食べ過ぎじゃね?お前」
「悟浄だって俺の分の餃子食ったろ!!」
「あ?あんな大量を自分の分とか言ってんじゃねーぞ猿っ」
そんなやり取りに
「いやぁ、本当に美味しかったですねぇ」
と八戒と三蔵がお茶をすすりながら放っておく。