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【最】共に居る

第1章 思い出


「あぁぁー、旨かったー!!」
「えぇ、本当に」
腹を満たせば次は宿だ。
「この辺りで姉弟でやられている宿屋があると伺ったのですが」
と八戒が配膳をしていた店員に訊ねれば
「それなら綾のとこだね。」
と直ぐ様答えが返ってくる。
「でも空いてるかしらねぇ」
と心配そうに苦笑する店員に
「あそこはいいぞ!酒も女もいい!」
と話をきいていた客が割りこんできた。
「そりゃ良い」
と笑を溢す悟浄に
「けれど旦那がおっかねー!」
「弟も妹もおっかねー!」
「コウメイに手出す奴なんていりゃしねぇ!」
「化けても無理だ!」
「違いねぇ!」
ドッと笑いが起こる客達の様子を見るからに好評ではあるようで、詳しい場所を聞き、まずは向かってみる事に。
木造2階建て、町に対して小さめではあるがきちんとした感じの佇まい
「いらっしゃいませ」
とドア鈴と共に現れた女性の笑顔も心地よく
「すみません。4人なんですが」
と一歩先に踏み出す悟浄を押さえ込むように訊ねる八戒。
「大丈夫ですよ。」
と笑顔を返され
「あぁ、なら良かった。それではお願いします」
「でしたら」
と受付の裏に回り帳簿を開くその女性が綾と言うそうで、暖かな声を聞きながら手続きを済ませていく。
すると再度ドアが開く音がし、
「あ、お帰りなさい」
と綾の言葉に一行の視線が戸に向くとそこには肩程の黒髪をなびかせ、その肩に小さい青竜を乗せた少女が。
そして、その少女は先程三蔵が夢に見た少女にも似た顔立ちで、目を細めて見つめれば、その子はペコリと頭を下げて受付横の階段を上がっていく。
「あ、こら光明!?お客様にきちんと挨拶なさい!」
その言葉に一行が一瞬ぴくりとする。
その名は一行が知る三蔵の師である名だ。
「すみません妹が」
と苦笑いする綾に
「噂で妹のコウメイさんとお聞きましたが」
と八戒。
「あぁ、そちらの方が女の子らしいからと皆からはそう呼ばれてて、ま、あだ名みたいなものです」
と返される。
「まぁ、光明というのも似たようなものですが」
とぽつりと綾が言ったのを一行は聞き逃さず、何事もない様に接してくる綾に合わせ、案内を受ける。
「食事は一階の食堂で。ただ夜遅くからはバーになりますので時間帯にはご注意を」
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