第1章 思い出
長く適当に伸ばした髪。
それは鬱陶しく彼女の周りを的割りつき、その髪色は俺達を対称にさせた。
「おやおや の顔が見えませんよ」
そう言って光明三蔵が髪をかきなでてやれば幼いくせに整った顔立ちが現れ
「江流、 の面倒もお願いしますね」
語尾を弾ませて俺に言ってくる師匠の隣に居るそいつの名前は
一体なんだったか・・・・
「さーんぞ!三蔵!腹へっ!っつ!!」
「ウッセー猿っ!」
「んだよ悟浄!!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ後部座席。
少しうたた寝をしていたようで、その間にいつものやり取りが起きる。
「考え事ですか三蔵?」
様子を伺ってくる八戒に適当に相槌し、後ろに一発食らわせる。
懐かしい記憶。
まだ幼く、三蔵の名も受け継いでない頃。
ー なぜこんな時に思い出すのか ー
「もうすぐ着きますからね。」
八戒がそう言ったのと同時に
バサッ
と黒い影が一行の頭上を通り、大きな青竜が現れる。
一瞬敵かと殺気だつ一行だったがそれはそのまま過ぎ去り、目的地の町に降り立った。
「・・・・格好良い!!」
と間をあけて悟空がはしゃぐ。
「バカ!猿っ!あんなんが降り立つとかヤバイだろ!」
そしてドゥルン!とエンジン音が響けば
「行きますよ!」
と八戒がジープを跳ばし、準備が出来てない一行達は苦しそうな表情を浮かべながら車体にしがみつく。
途中、土を被せただけの簡易な墓をいくつか見かけた。花が添えてあるものもあれば近くには次の準備の様に穴だけがあいているものも。
そうして町につくと
「なにがヤベェんだ。何が」
と周囲を高めの塀で覆うその町は、青竜に怯える様子はなく、門番が一行を不振がったが三蔵の姿を確認すると嬉々として扉を開けてくれた。そして、中に入れば
「ちょー平和そう」
と町は賑わい、何事もない様子だった。
「あの竜はなんだったんでしょう?」
「ま、こんだけ平和そうなら心配なくね?」
中には物騒な物を持つ男衆もいたが、それは妖怪対策だと彷彿させた。しかし住民の表情からして頻繁に襲われている訳ではなさそうで、ならば一度様子見となった。
「旨そうな匂い!!」
グルメ担当の悟空は呑気に走り回り、それについていけば飯屋の前。そして当たり前の様に中に入る一行は思い思いのものを注文し、次々と来る料理の皿をどんどんたいらげていく。