第2章 ヘドロ編
第2弾 無個性の少年
それはある日の朝の出来事だ。
喧騒が行き交う街。
通勤、通学目的のサラリーマンや学生たちが、小走りに横断歩道を渡っていく中「田等院駅」上の路線に巨大なヴィランが現れた。
「ヴィランだ!!」誰かが声を上げた。
ヒーローの活躍を身近に見たい者は駅前に群がり、巻き込まれたくない者はささっとその場から離れた。
「怪物化とかすげー“個性”何やらかしたん?」
「引ったくり追い詰められて暴れてんだと...」
私は運悪く人混みに流されてしまい、不本意にも観戦しているその時だった
「誰戦ってます!?」緑のもじゃもじゃ頭の少年に聞かれた。
「えーっと...,誰だろう...」オールマイト以外のあんまり分からないんだよなぁ。
「通勤時間帯に能力違法行使及び強盗致傷、まさに邪悪の権化よ。」
「木みたいな...」
「“シンリンカムイ”!!人気急上昇中の若手実力派!!」
人...、聞く必要あったにだろうか...
楽しそうに観戦している彼を見てたら
脳裏に幼い自分が浮かび上がった。
「来夢大きくなった、ヒーローになる!!」
懐かしいな。
事件は瞬く間にヒーローの活躍により解決された。
もじゃもじゃ頭の少年は何かブツブツ言いながらノートにメモをしていた。
ガチ勢だぁ...,すごいな。
「君、もしかしてヒーロー志望?」少し気になって聞いてしまった...
そう聞くと、彼は小さく頷いた。
「そう、頑張ってね!!」と言いながら私はさりげなく彼の肩を触った。
そしたら不思議なことに気づいた、なんの情報も分析できなかった、つまり彼は...
「はい、頑張ります!」と嬉しく笑ってくれた。
無個性だ...,なぜた私は彼が可笑しく見えた。
ヒーローは誰にでもなれる職業じゃない。
それは私が誰よりも知っていることだ。