第5章 未来
トントン。
扉を叩く。中から入れってぶっきらぼうな答えが返ってくる。
さよなら棗。今日の事はありがとう。
そう思いながらドアを開けた。
寂しそうに月を見ている棗。最後なのもきっと知ってる。
私が何をしようとしてるのかもきっと全部分かってる。
そして何しに来たのかも分かってる。
行くなって背中が語ってるのが分かる。
「棗…?今日はありがとう…」
「俺の前から居なくなるな」
こっちを一切見ないで私の言ったことを返してくる。
「棗には蜜柑がいるよ…私はこれからもずっと1人
それでいいのアリスになって良かったルカや棗にまた出会えてよかった心からそう思ってるよ」
私が言っても棗はずっと無視して月を見ている。
きっと寂しいんだろう。
止めても私がどこかに行くのは知ってるし…棗には蜜柑が居る。
きっと今更振ることも出来ない。それは棗が蜜柑を好きだから。私の事好きとか言うけどきっとそれは勘違い。
初恋だから忘れれないだけなんだと思う。
「じゃあもう行くね…蜜柑にアリス……」
「こっち来いよ」
棗がこちらを向く月の光に照らされていつもよりイケメンに見える。
不覚にもその真剣な眼差しに飲み込まれそうになった。