第3章 覚醒をはじめた証
親父の部屋を出ると、僅かだがユリの気配を感じて心が踊った。
このところこっちの海じゃ珍しく晴天続きで、海の見通しも良い。
暫く気配のする方を見ていると人を乗せたでけぇ鳥が来たと見張り番のクルーの声。
ユリを知るクルーは一斉に見張り番の指し示す方へ向かい空を見る。
ビューンと風を切りながら飛ぶ鳥に乗ったユリ。綺麗に伸ばされた髪が太陽によって光を帯び、仮面をはずした顔は満面の笑みを俺たちに向けた。
笑い方は似ていないが、顔は、白菊の18歳の頃とよく似ていた。
「マルコー!!イゾーウ!!みんなー!!
ただいまー!!」
「おぉぉぉぉおおお!!」
いろんな声が飛び交いみんなが手を振りユリを歓迎した。
鳥に乗ったままモビーを一回りした後、俺たちの後から歩いてきた親父が目に留まったのか、親父に向かって飛び始めた。
「父さん!!今帰りました!」
ユリは何の迷いもなく、親父の胸に飛び込んだ。
「グラララ....。随分元気じゃねぇか。待ってたぞ!よく帰ってきてくれたなぁ。」
デカイ手で優しくその背を撫でる姿は羨ましくも本当の親子じゃねぇかって思うくらい自然で美しかった。
「父さん、体の調子よくないと聞きました。大事ないでしょうか?」
「グラララ...。誰か言いやがったな?マルコ辺りか。
心配はいらねぇ。おめぇの顔見て元気が出たぞ。」
「またそのような.....。
後でディルバリーの船がこちらに来ます。父さんが好みそうなテイストの薬酒を仕込んで参りました!」
「そりゃぁ、気が利くなぁ。着いたら早速戴こうじゃねぇか。
ほら、野郎共が待ってるぞ。」
ユリが親父から降りると、俺を見つけて走ってきた。
その表情は花が咲いたような笑顔で、ユリらしい表情。
「マルコ!」
思いの外勢いよく抱きついてきて、不覚にもよろけてしまった。
「ただ今帰りました!」
「おうよい!見ねぇうちにでかくなって綺麗になったよい。」
そう言って頭を撫でてやると、顔を上げて笑った。
その顔でこっちを見るなよい......。
一瞬白菊と被って見えてキスしたいと思ってしまったじゃねぇか.....。