第2章 旅医者の女
ディルバリーの船で、先程一戦を終えたユリを迎えた。
後から来た火神と船にいた金鏡は、彼女のパチンと指を弾く音で煙幕を伴い式紙に戻った。
「いやぁ、やっぱり赤髪とヨシタカの妹って位あるなぁ!あんなおっかねぇ男を一撃で沈めちまうんだからよぉ!」
興奮冷めやまぬこの男はダグラス。
ユリが来るまでは、海賊などからの護衛も担当していた商品運搬、管理の責任者だ。
三十路過ぎでガタイも良いこの男は、ユリが入ったことで俺の仕事が減って肩の荷が下りたとか言っていた。
「これで、お前の腕も、5億以上の価値があるってわけだ!」
「そもそも商船の護衛って手配書出されるの?」
ユリが前々から感じていたことを聞いてみた。
「出された前例はないが、嬢ちゃんは四皇の二人とその海賊団に深く関係がある。
それにあの強さだ。
世界政府も警戒するのは間違いないだろうよ。
手内に収めようともするかもしれんな。」
ボルさんが腕組をしながら見解を述べる。
「王下七武海に勧誘されるということ?」
王下七武海。
世界政府の戦力になるための世界公認の海賊。
政府の汚さを今でも痛感し、気嫌いするリドル兄妹には不名誉な称号でもあった。
「あぁ。海賊ではないが、身内がみんな海賊ならその分類にはいるのも世間的にはおかしくはなかろうな。」
「俺もそう思うぜ。だが、ユリは世界政府をあんまり良くは思ってないだろう。
でもなぁ、俺たちには特権があるんだ!知りたいか?」
顔をずいとユリを覗くように見てダグラスが尋ねた。
こくりと頷くと、その話は俺がするとボルさんに退けられた。
「政府の法で商船護衛協定ってんのがある。政府の業務を妨害しなけりゃ、基本的には自由にやれる。ってやつだ。
政府の犬にならなくてすむ。加盟していない海賊と関わっても共闘して倒す相手が世界政府でなければ問題ない。
商船に攻撃してくる敵は七武海であっても倒すことが許されるそうだ。
ただし、登録護衛員の臨時召集には応じなければ行けない。連絡事項だけだと聞いている。」