第2章 旅医者の女
残るは母船だけ。
再び、咲と共に上空へ舞い上がり銃弾を交わしながら急降下。
水狐と氷傀を両手に構え、振り下ろし、その斬撃で船を切り裂いた。
「ぎゃぁぁああああ!!」
「動けねぇ!くそ!!ただが小娘一人に!!」
5億に近い男も、氷が割れず動けない状態で船と共に海の底へ消えた。
ユリの姿に返り血の一つもなく、外傷の一つもない。
能力で消えていた船の姿は再び現れ、咲と共に船へ戻ると、拍手と歓声、歓喜の口笛が海へ響き渡っていた。
近くの島陰でその一部始終を見ていた一人の男がいた。
「まるで、あの女と同じではないか....。」
羽飾りを施した帽子の鍔を上げ、女の姿が消えた船に目をやる。
「........見事な太刀筋だ。商船の護衛とて政府も放っては置かんだろう。
いずれ、会おうではないか。」
そう呟き、棺舟に向かう男の顔は、どこか楽しそうに口角を上げていたのだった。