第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
そのあと、この船の隊長を紹介され日が傾くと、新しい家族のためにと宴が開かれた。
子供にもかかわらず口上までさせてくれて子供でも筋を通してくれることが、凄く嬉しかった。
流石に酒は飲まされず、果汁や水だったが、陽気な海の男達はどこかの親族というより、本当の家族のように接してくれた。
おでん様が彼らとの話を沢山したがるわけだ。
みんないい人ばかりだ。
ふと妹達を見ると、それぞれ隊長達の膝の上でケラケラと楽しそうな笑い声をあげて楽しんでいる。
少々、女の子だからという不安はあるが、大勢でこうしている時は大丈夫そうだ。それぞれ隊長達も同じことを考えてくれていたようで妹達をちゃんと見てくれている。
「おまえ、やっぱり良い兄貴だな!」
「はい?」
これまた不思議な頭の料理人の服装をしたガタイの良い男が話しかけてきた。
サッチというらしい。
「妹たちが気になったんだろ?まぁ当然か。
こんなに男ばっかりの大所帯じゃァねぇ。
でも、ちゃんと隊長達が目を光らせてるから安心して顔が緩んだんだろ?」
何でもお見通しだよと言わんばかりの顔で笑った。
「今日はナース、あ、看護師って言ったらわかりやすいか?
まぁそいつらは引っ込んでるんだが、女が10人ばかりいるよ。
その服装じゃ、街歩くと目立っちまうから、途中でナース達と服買いに行くだろう。
髪も士族の命とは聞いたことがあるが、お前の身を守るためだ。下ろした方がいい。」
最後はなんか言いづらそうだったが、某を気遣っての事であろう。
この男も案外気が良さそうだ。
「"郷に入れば郷に従え"であろう?躊躇いはないわけはないが、覚悟はできておる。
気遣ってくれたのであろう?忝ない(カタジケナイ)。」
「なんか、お前と話しているとガキと話しているのを忘れちまうな!しっかりした出来た野郎だぜ!」
ハハハと笑うと、某の頭をガシガシと撫で回して、厨房に戻ると言って歩いていった。
そのあとは妹たちがいるほうに行き、談笑し、
デザートだといって出された果物のゼリーを頬張った。
いつの間にか妹たちが寝てしまい、我等3人はナースの部屋で寝ることになった。
母上と同じくらいの歳の女が、いろいろと世話してくれた。名をリーザというらしい。