第2章 旅医者の女
何がこうなったのか。
しかし、相手は幼い頃からずっと憧れであり目標としてきた兄と慕う人。
ドキドキはしても恋い焦がれとは少し違う。
どちらかといえば恥ずかしいという分類。
弾き飛ばすでもない、ただじっとしている事しかできなかった。
シャンクスはまるで両手で留め具をつけるかのように手こずる事なくペンダントをつけ終えると、ふと顔を覗き込むので思わず顔を隠した。
「なんだ!おめぇ顔真っ赤じゃねぇか!」
と、いつものように笑い出す。
こちらの気もお構いなしで、余裕もって見せるのに、
その耳はほんのり赤かった。
首のものをよく見ると、ペンダントのトップは、赤髪海賊団のジョリーロジャーで、赤い傷と交わりあう二本の剣の
グリップはザクロ石でできている。
石言葉は真実、友愛、忠実。
先程の言葉からとるに、
私たちの間柄からして
"俺はいつでも、お前の味方だ"というメッセージと捉えるべきよね?
でも、違う願望も見えないわけではない。
「ユリをそれで拘束するという意図はない。ただ、それが幾分か、お前の身を守るものになればと思ったまでだ。」
一番気にしているのは、私がまた誰かに狙われないかってことでしょ?
こいつを泣かしたらこのジョリーロジャーが黙っちゃいねぇぞ!ってお守り。
あの件で兄上とシャンクスが私を部屋近辺で一人にさせないとしてくれていたことも、
それ以前にも、何度か心が折れかけた時側にいたり....彼に救われたことは数えきれない。
いろいろな思いが混じって目頭に込み上げてきた。
「心配性で誰よりも強く優しい兄を持つと、嬉しくて、頼もしくて泣かされてばかりです。」
「随分嬉しいこと言ってくれるじゃないか。
.....存分に暴れて強くなってこい。」
ポンと肩に乗せられた手が優しく暖かいことに、地に足がついたかの如く全身のエネルギーが増幅されていくのを感じたのだった。
「シャンクス、ありがとう。」
「あぁ。行ってこい。」
そういうと、一人船内に戻っていってしまった。