第2章 旅医者の女
レッドフォース号の甲板に降り立つと、シャンクスと兄上の隣に並んで、港を見下ろした。
最前列ではネプチューン王や王子達がこちらを見ていた。
「しらほしが世話になった。道中気を付けて帰られよ。」
「忝ない。王家の方々もお元気で。」
「ユリ、先程は皆のために飛行していただいてありがとう。また来るときにまた空を飛んでやって欲しいじゃもん。」
「是非とも!皆さんお元気で!また来ます!」
船は出航の合図を出したあと、ゆっくりと進みだし、それから、島の皆はこちらの姿が見えなくなるまで絵を振り続けてくれたのだった。
海流に乗って順調に航海中。
海流が穏やかなエリアに入ったとき、薄暗い甲板でシャンクスと二人立っていた。
しんと静まりかえった辺りはときどき海王類の囁きが聞こえる程度。
「ユリに会うまでは時間が長くてしょうがなかったっていうのに、あっという間だな。
ここを抜けたらもう、行っちまう。」
船の光がシャボンの膜と海を照らして幻想的な色をなしているなか、思いに更けたような面持ちで海上を見つめていた。
「そうね。シャボンディー諸島の沖でこの船見たときは凄く嬉しかった。
みんなと会えて本当に楽しかったわ。」
「なぁ。覚えているか?おまえがガキの頃俺が約束したこと。」
「ふふ。どうしたの?
覚えてるよ?
親がいなくなろうが、大事なやつをいくら失おうが、
死なないでお前達を見守るって。」
そういうと、幼い頃、あの風の強い日のような真剣な面持ちになった。
「あぁ。そうだ。今もこれっぽちも気持ちは変わっちゃい無い。
どこにいようが、何をしていようがおまえがもし助けを呼ぶなら何処へだって行く。
だが、シャボンディー諸島での件のようなことがこれからあるかも解らない。」
ポケットに手を入れて何かを取り出し、私の背後に回ると、右手と自らの歯を駆使してペンダントらしきものを巻かれた。
「っ.....ちょっと!擽ったい」
「手がねぇんだから我慢しろ!」
息が、唇が時々当たる加減でもう顔が真っ赤だ。