第2章 旅医者の女
翌朝、案の定、頭を抱えて現れた昨日の飲み対決に参加した面子。
昨夜仕込んだ煎じ薬を飲ませてあげた。
朝御飯は食べれる人たちだけで食べて、各々出航の準備に取りかかる。
「ユリは今日で別れるんだから、必要なものだけこっち持って来いよ。」
兄上がそういうのはクルーとシャンクスのため。
そうとわかっていたし、私自身が寂しいのもあって、言う通りにした。
プルプルプルプル
プルプルプルプル
白衣のポケットに入れていた子でんでん虫が鳴りとりだした。
イゾウだ。
がちゃ
《姫!待ちきれなくて電話しちまったが、今は大丈夫かい?》
少しまた声の艶が増した優しい声が、鼓膜を揺らす。
話し方は役者の話し方のままで、私の呼び方も“姫“のまま。
「イゾウ!!ごめんなさい、こっちからかけるつもりだったのに.........って、もう国を出て何年です?いい加減姫はやめてくださいまし。恥ずかしゅうございます!」
《名前で呼ぶなんざ烏滸がましい。こっちは曾祖父の代から姫の家の忍やってんだ。ご先祖様から怒られちまうよ。》
「あら、イゾウはそんなこと気にする人だったかしら?」
《それは言わねぇこった!っで、今どこだい?あとどれくらいで来れそうだ?》
「ふふ。これから魚人島を出るところよ!あと3日以内でハンドアイランドに着くわ。
ディルバリーカンパニーのみんなと一緒にくるから!」
商社の船のクルーになるって話は、みんなに直接会って話したいから伏せておくつもりだ。
《はあ?ディル.....あ、あの大商社のか?姫はまたでかいの捕まえたようだねぇ...。》
驚いているのか、感心しているのか解らない声で話している後ろで、数人がガヤガヤ騒いでいる。おそらく、マルコとサッチだろう。
「師匠とサッチ兄さんいるの?」
《あぁ、さっきから後ろで騒がしいのさ。親父もこいつらも姫に会うことを楽しみに待ってるよ。》
イゾウの後ろでは そろそろ代われとか、イゾウ!テメーばっかり話しやがってと取り合いになっている。
その状況で話しているイゾウは、恐らく悪戯心で平然としているんだろうと思うと笑えてきた。
懐かしい.....。
早く会いたいな...。