第2章 旅医者の女
「では、赤髪殿、ヨシタカ、ユリ、しらほしをよろしく頼む。」
「はい。絶対に怪我をさせないと約束します。」
「しらほし。気を付けて楽しんでくるんじゃもん。
決してはぐれてはならぬぞ!
5人から離れてはならんぞ!
定刻には必ずや戻ってくるじゃもん!
そして.....」
まだ言い足りないのかモゴモゴしているネプチューン王は久しぶりに、それも危険な外に連れ出すことが気が気でない様子。
父親ならそうなってしかたない。
しかも、他人の我々から見てもしらほしはこの世一可愛らしい。
でも、
少しは護衛のメンバーを信用してほしいものだ。
「はい、お父様、気を付けて行ってきます。」
普通のこれくらいの年頃なら、父親の心配しすぎは鬱陶しいものだが、そんな気持ちなど微塵も感じさせず、笑顔で応えるしらほし。
そしてメガロの上のるしらほしを中心に、他の鮫にそれぞれ一人ずつ乗り、前をリュウボシ、シャンクス。両サイドに私と兄上、後方にマンボシと護衛につくことになった。
咲は私の肩という定位置で出番がないことに不服そうな顔をしている。
さぁ、寄り道しながら海の森への散歩へ出発。
どこの上空にいても巨体の人魚姫は目立つわけで、それを取り巻くメンバーにも驚愕する国民達。
中にはしらほしの美しさに感嘆するもの、手を振るものもいて、しらほしはにこやかに手を振り替えしていた。
街の人が噂を聞き付けて、いつの間にか姫の凱旋のような状況。
「しらほし姫様!!」
「マンボシ王子!!」
「リュウボシ王子!!」
しまいには勘違いをして紙吹雪を撒く輩まで現れて、本当に凱旋のようになってきて、シャンクスはこれは予想外だと頭を掻いていた。
ちょうどその時、気配を感じて後ろを振り向く。
一番しらほしの近くを飛んでいた兄上が気付き空を蹴った。
大太刀で、しらほしに向かう斧を切り刻む。
「大事ないか?しらほし。」
「はっ、はい!ヨシタカ様!」
あら、あなたの王子さまが助けてくれて良かったわね。
声をかけられて顔を赤く染めるしらほしを見てまたかわいいと思ってしまう。
国民達も兄上の刀さばきを見て歓声が上がり、兄上もどうしたら言いかわからないような顔をしていた。