第2章 旅医者の女
「素敵な方が多すぎるとそうなってしまうのでしょうか?」
しらほしは両手を頬に当てて、何かを考えるように斜め上を見ている。
確かに、私のまわりは素敵だし、人間的に尊敬に値する人ばかり。
年齢的には殆どがオッサンだけど....。
それが苦にならないほどだ。
あ、でも感覚が鈍くなったというのは言い訳かもしれない。
本当は私に対して恋心を抱いている人がいるのも何となくわかる。
でも、意識しないのは.....
「んー。でも、今は恋愛よりも強くなる方にベクトルが向いてるのかもしれないわね。
でも、もし、好きな人が出来るとしたら、その人に守られるより、守り合える人かもしれない。
私より、強い人が私のことを好きでも、“不釣り合い“というか、自分が強くなれないような気がするの」
そう。これが答えであっていると思う。
しらほしも、何となく解ってくれたようで、そんなお方が現れるといいですねと言ってくれた。
「ユリちゃん様が好きになられた方ができましたら、恋人ができましたら、会ってみたいです。」
「ふふっ。その時が来たら連れてくるね。」
「しらほしはどんな殿方がお好みかしら?」
今度は聞いてみる。
考えては見たけど、まだ子供の年齢でこの部屋にいる限り、あのデッケンしかこの子に寄ってくる男を知らない。
「えっ?あ......あのぅ」
ん?もじもじしだした?
「ヨシタカ様のようなお方が......はぁぁ...。」
「あ、兄上!?」
プシューと効果音が出そうな位顔を赤くして手で隠すしらほし。
確かに、妹って立場でなくても
兄上はそこら辺の年頃の男で格上だとは思っていたけど
「え、もしかして、兄上の事好きなの?」
潤んだ目で両手の隙間から私を見る目は"うん"と頷いているようだ。
.......そうか....、それは気付かなかった。
「うちの兄を.....よろしくお願いします....。」
「ま、まだお付き合いもしておりませんのに...。
言わないでくださいね?絶対ですよ?」
焦って訴えかけるこの子は、本当に恋する乙女。
可愛すぎていじってしまいそう。