第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
マルコに続いて部屋に入った。
部屋の中央に見たこともないくらいの大きい男がいた。
手を引いている妹たちの手が震えている。
「随分妹想いなんだな。安心しな。取って喰いはしねぇよ。
俺はエドワード・ニューゲート。白髭だ。
おでんから話しは聞いたことあるか?」
「はい。某、主君の海の話が何より興味深く、ニューゲート様にお会いできたこと恐悦至極にございまする。」
「流石、士族だな。礼儀も振る舞いも板についている。
気に入ったぞ小僧!グララララ.....!」
「あ、有り難うございまする。されど、事が突然でした故、気が動転して....まだ状況を飲み込めておらず......
我等3人、ここに居りますのは父上とおでん様の策にございましょうか?」
そう思ったのはついさっき。
ここの船の男たちが優しく接してくること、
細かいところだが起きた時、
寝ている部屋がきれいに整頓されて、寝具も洗い立ての臭いがしたこと
誘拐にしては、厚待遇すぎるのだ。
いくら拙者が子供だとはいえ、士族の嫡男。
これくらいは気づかねば...。
「あぁ、そうだ。両親から手紙を預かっている。
読んでやってくれと言われたようだ。
俺が読み上げて構わねぇか。」
「お願い申し上げます。」
ー義孝、ユリ、雪
これを読んでおるときには、おでん様の戦友、白髭様の御前であろう。
さぞ、驚かれ、動揺し、不安であろうな。
そなた達は幼いと言うのに父と共に国を案じ強うなりたいと申してくれた。
某はただ、我が子が可愛くて国を出したのではない。
おでん様と某は、国の行く末を案じ、
お前たちに強くなって帰ってきて、
国を取り戻して欲しいという願いを持って
お前達を海の戦士に託したのだ。
まだ幼く親に甘えたい盛りのお前たちに、突き放すだけでなく、重い使命を背負わせることになることを許して欲しい。
我等が受け継いだ予知夢の能力で
時が来たお告げを見たときは
お前たち3人と、共に戦ってくれる仲間と国を取り戻し国と民の仇をとって欲しい。
トキ様が、桃の助様、その他の光月家の侍を事件勃発から20年後に送られると聞いた。
目安はそれぐらいになると心得よ。
某もおでん様同様自由を愛しておる。
なればこそ、父、母野分まで海の外で自由に生き、旅をし、様々なものに触れよ。