第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
ぼんやりした視界が少しずつ覚めてきた。
もう朝になるのか。
ん?
なぜ揺れている?
なぜ潮の臭いがする?
なぜ水が当たるような音が止まない?
ん?
見慣れない天井、
感じたことのない寝心地
明らかにおかしい。
ここはどこだ?
俺は一気に目が覚めてガバッといきおいよく体を起こした。
「おぅ起きたかよい、チビ助!」
変な頭の男が多分俺を呼んだ。
よいってなんでござるか.....。
「お主何奴!!ここはどこじゃ!
父上、母上はどこじゃ!」
「おいおい、質問が多いな。
ひとつずつ答えるからよく聞けよい。」
明らかにめんどくさそうな顔をしている。
さっきから"よい"が離れなくなってきておるではないか。
「俺はマルコ、ここは海のど真ん中に浮かぶ俺たちの船モビーディック号。
頭は白髭ことエドワード・ニューゲート。
俺たちは白髭の事を親父と呼んでるよい。
お前たちはおでんや義久に頼まれて海に連れ出したよい。
向かう先はシャボンディー諸島。
おまえたちはそこで待つ男の元で修行だよい。
男の名前はシルバーズ・レイリー俺たちにとっちゃァ敵だがもう引退している身。
お前達を彼処まで送るのが俺たちの役目だよい。
親父はおまえらを送った後も身を守ると言っているよい。
おでんの家来の子供なら名前くらいは知っているな?
話がでかすぎて信じられないんなら、手紙も預かっているよい。
親父にお前らが起きたこと教えなきゃならねぇよい。ついてこい。」
黙って聞いてりゃ、おでん様の冒険話の中で聞いたことがある言葉ばかり聞かされる。
しかも、海に出たことがない俺からすればかなりでかい話だ。尚更頭が回らない。
成すすべがなく、妹二人の手をとって、マルコと名乗るよいよい男の後をついていった。
「親父、3人が目を覚ましたよい。連れてきたよい。」
「入れ。」
船長室と言う部屋から聞いたことのない重量感の低い声が聞こえた。
思わず身震いするほどだった。