第2章 旅医者の女
硬殼塔の前に来ると鋼鉄の扉には数本の斧が刺さっており、ことの重大さに心を痛めた。
一番前を歩いていたフカボシ王子が扉を少し開けてしらほしの部屋を開けた。
「しらほし!フカボシだ。ヨシタカとユリ、赤髪のシャンクスを連れてきた。入ってよいか?」
「ユリちゃん様が!?」
明るく可愛らしい声が部屋の中から聞こえてくる。
お入りください。と促され、皆が部屋に入ろうとした時、
何らかの気配を感じて振り向くと斧がシュルシュルと回転をかけて飛んできた。
シャンクスが飛び上がって剣で受け止めるも、誰かが押しているようにグッグッと抵抗するように動いている。
それを押し返すとやっと弾かれて硬殼塔の扉に突き刺さった。
「これは確かにやっかいだな。居場所が掴めないというのがタチが悪い。」
「赤髪殿、忝ない。助かった。」
フカボシ王子が頭を下げた。
「俺達は3人みたいに、気配を感じとるには鈍いのラシド....。
だから滅多にしらほしの部屋には入れなシド!
しらほしはいつも狭い部屋で一人ミド。」
リュウボシの話だと兄弟でも会いに行けるのは稀だと言う。
彼らはいつも気が気でないようだ。
私が最後に来たとき、しらほしは5歳。それでも私たちより遥かに大きかった彼女が狭い部屋で一人きりで何年もいると考えると胸が痛かった。
しかも母親を失って整理がつかないうちの出来事。流石に心を傷まれたはず。
ネプチューン王も王子達も大切な妹をこんな檻の中に入れたいはずがない。
だからとて、声も姿も聞こえないところでは、思いは届いてもずっと一人だ。
「一人でこの部屋で闘ってきたのね...。」
やっと中に入ると、5年経ってますます大きくなったしらほしがきらきらと眩いばかりの笑顔で出迎えてくれた。
「しらほし!」
わたしはしらほしの手を掴んだ。
「ヨシタカ様!ユリちゃん様!お久しゅうございます!今日こられるとの事ですごく楽しみに待っておりました。
はっ!ユリちゃん様のお肩におりますのは、もしかして地上のお鳥さんですか?
はっ!申し訳ございません!シャンクス様。しらほしと申します!ようこそ、いらしてくださいました。
御二人の御兄様でお強くお優しいと伺っております。
先程はお助けいただき有り難うございました!」