第2章 旅医者の女
「ユリも食べろよ!」
声をかけてきたのは仕事を終えて遅く来たシャンクス。
「あとは俺達がするから、大丈夫っすよ!」
と言われて促されて、キッチンを出た。
ここに座れと促され、シャンクスの隣の席。
今日はそこまで飲んでいる様子はない。
「これ食っちまったら、お前をまた引き止めたくなったじゃないか。
本当に旨いし、食べるのが勿体ないほど綺麗だ。」
「ありがとう!
今度はいつ会えるか解らないから....。張り切りすぎました。」
なんて言うと、
「すぐ来いよ。本当はこうしてお前と、同じ船に乗って航海したいんだ。」
え...?
"お前と"って
それってどういう.....?
「ははっ!まぁ、気にするな。
ユリが強くなりたいって思ってるのも知ってるのに、お前が戦場に行って戦う姿、見たくないと思ってしまう。ヨシタカだってそうだ。
今は甘やかされたくない。
それがユリの本心だろう?」
一瞬寂しそうな顔をしたのを見逃さなかった。
「えぇ。そうね。今は守られる方にいたくないの。
まだ、あの国で戦うには私はまだ弱すぎる。
強くならなければ。」
「もっと強くなれるさ。
でも、ことが済んだら俺の船乗れよ。
待ってる。
ヨシタカとな。」
その表情から"妹として"と思っている節が感じられなかったような気もしたのに、兄上と同じ気持ちだと締め括ったその言葉で、
なぜか、その場は言われたことをそのまま受け止めることにした。
「戦の後、あの国が私を求めていたら留まるつもり。
先々どうなるかって解らないわ。
私がやりたいこと全部やりきったら、乗せてもらえるかしら。」
「長くなりそうだな。それまでに顔を見せに来てくれればいい。」
「ありがとう。そうするわ。」
この人は私にとって、器も何もかも私には大きすぎるんだ。
何もかも解った上で、他人の自由も奪わない。
それなのに、いつまでも待つという。
大きな手のひらで転がされているんだろうか?
何事も、どんな心も全て受け入れて、恩恵を与える様はまるで大海のよう。
そんな人間になりたい。
そう思ったの。