第2章 旅医者の女
「次は魚人島だ!野郎、共出航だぁ!」
「船を出すぞ。赤髪さんに続け!」
それぞれの船で号令を出し出航。
真昼のお日様としばらくの間お別れ。
船着き場には父様と母様が見送りに来てくれた。
「「行ってきます」」
兄上と一緒に手を振って見送りに応えた。
父様、母様とは暫くお別れ。次はいつ会えるかな。
船は海中に潜り、地上はどんどん遠ざかり、魚人島へと向かった。
夕食の準備をコック達と一緒に作る。
メニューはワノ国フルコース。
寿司、天ぷら、野菜の煮しめに雑煮、おでん鍋、肉好きの男達のために骨付き肉の照り焼き、和風サラダ。
コックに指示を出しながら、自らもてきぱきと、回りが驚くような包丁さばきと手際の良さであっという間に仕上げていく。
「ユリちゃんスゲー!!
ずっとこの船にいて欲しいっす!!」
と、コック長。ディルバリーに乗ると言ったらガッカリしていた。
夕食の時間になるとわらわらとクルーが食堂に集まってくる。
「わー!女の子の手料理ぃ!」
「ユリちゃんの手料理!!」
いつもの食事よりもかなり煩いが、皆が喜んでくれるのが嬉しい。
食事を受け取った人たちからは、感嘆の声。
「これなんだ?キュウリが鳥になっているぞ?すげー!職人じゃねぇか!」
「こんな芸術みてぇな食事は初めてだぞ!」
なんて、さらに喜んでくれる。
「包丁細工っていうの。ワノ国の包丁の芸術よ。遠慮なく食べてね!」
「「「「「いただきます!!!」」」」」
それからは海賊で男の大所帯の食事。
あんなに沢山作ったすべての料理がみるみる減っていくし、どんどんおかわりも並ぶ。
がやがやと楽しそうな声に始終笑った。
鎖国国家の郷土料理とあって殆どの人が初めて食べるものばかりだったというのに、どれも大人気だった。
「ユリ、よくこんなの出来るようになったなぁ。」
兄上もいつ覚えたんだと感心したようにいうと、
「俺はやっぱり、この味が体に合うようだ」
なんて言ってた。
体は一番欲しているものが解るのよね。
それが数年しかいなかったのに、その味が骨身に染みるほど故郷の味として味覚が覚えていた。