第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
「おめぇは誰だ?」
「拙者、紅條義正公の使いでご挨拶にうかがいました
伊助でござる。
我が主が跡取りをお引き受けくだされたこと、義久公は誠に有り難く、このご恩は消して忘れぬと申しておりました。」
彼の前に膝間付き深々と頭を下げた。
「あの距離からこの短時間で城から来つたぁ、お前もその主君もなかなかのやり手と見た。
お前らの希望の子はレイリーと俺とで大事に育てて強くしてやる。
このチビが大人になってトキが言うように未来に彼奴の子が現れたとき、俺も力になろうと思っている。
お前らの国をとろうとしている輩はだいたい目星はついちゃァいるが、完全に倒すことも留目を射すこともできねぇ。
今は時期じゃねぇと思っている。危機がわかっているのに助けられねぇこと、許せ。」
「有り難きお言葉。義久公にお伝え申す。ここに長居は得策とは思いませぬ。拙者はこれにて。航海中どうぞお気をつけなすって!」
「あぁ。大事な子供を預かるんだ下手なこたァしねぇよ。グラララララ。お前も気を付けて帰れ。」
「ははっ!」
最後にそこら辺で寝転んでいる3人を見た。
スヤスヤと気持ち良さそうに眠っている。
頬も暖かく柔らかい。
「元気に育てよ」
と彼らに言い残すと俺は船長室を後にし、船を出た。
少しの間だったが伊造に良い土産話ができた。
俺は来た道を同じ速度で引き返し帰路についた。
義久様は、見たまま聞いたままを話すと、そうかと笑みを浮かべられご苦労だったなというと、自室に帰られた。