第2章 旅医者の女
特に予定はなかったので、訓練を受けて今日中に咲を引き取ることにした。
訓練が一日中かかるというので、待たせては申し訳ないと言ったが、面白そうだから見たいと目を輝かせていた二人。
結局見物人としていることに。
「何か、ユリさんが猛禽類を肩に乗せてるって、絵的に最高にカッコいいっす!」
と、キラキラした目で見てくる。
ハイハイと、適当にあしらってゲンゾウさんの話に耳を傾け、ペンを走らせたり実践してみたりした。
声のかけ方は大方、一発合格。
世話、餌の与え方等一通り教えてもらい、咲は驚くほどなついた。
「君は本当に動物を飼ったことも、乗馬の経験もないのかい?」
「えぇ。ただ、動物には何もしなくても好かれる事が多いです。」
次は乗馬ならぬ乗鳥。
行こう!と強めに言うと、カラスくらいの大きさからみるみる大きくなって、人一人が充分乗って飛べるような大きさになった。
どうやら、大きさも力も大きくできるような実を食べたのだろう。
それに私にだけだろうか。この子の意思が心で会話しているようにわかる。
私を背中に乗ることを促すようにくるりと背を向け、静止した。
促されるまま背に股がると、これをつけろとゲンゾウさんから渡された手綱を咲に襷掛け(タスキガケ)に巻いて握った。
行けと合図を出すと大きくバサッと羽ばたき一瞬にして見る景色ががらりと変わった。
流石最速といわれる鳥。もう、ヤルキマングローブを見下ろせる位置。
シャボン玉も届かないところで悠々と飛ぶ様は、幼い頃、マルコが不死鳥になった背に乗って遊んでくれたことを思い出す。
あぁ。本物の鳥には乗ったことないけど、私空を飛んでた。
マルコも大概私にアマかった。
これは嫉妬させちゃうかな?
なんて思い出に更けてると
ビューンと真っ逆さまに急降下
や゙ぁぁぁぁぁあああ!!!
必死で手綱にすがる。
あ、隼の最高速度ってこの急降下の時だったっけ??
「上に上がって!咲!ごめんってば!」
これも気持ちが通じたようで急降下から穏やかに上昇した。
この子もヤキモチ焼きか。
気を付けよう。