第2章 旅医者の女
「父様に顔も見せず来てしまったけどどうしましょう。」
島に来たのは勿論父様と母様に会うためだったのに、あまりにも大人数、しかも、あの騒ぎ様に、商船と海賊の繋ぎである私は、抜け出せずにいた。
しかも、父様は海賊王の右腕。
海軍がいつも以上にうろうろしているところを好き好んでうろうろしたくないはず。
「もう少し早く聞くべきだろ!
心配するな。
俺が手を回してないわけがないじゃないか。」
シャンクスが顎で後ろを向けと促すと、いつの間にか父様と母様が立っていた。
「可愛い娘に久しぶりに会えるのにじっとはしてられないだろう?
それに、娘をここまで送ってくれた礼も言わんといけないのでな。」
「そうよ!今日はお店一日中閉めて待ってたの。
おかえり。そして一人前の医者になれておめでとう!」
「父様!母様!お会いしとう御座いました!!」
突然の二人の登場に感極まって、ついつい母国の話し方になったのにも気付かず、走り出す。
優しい笑顔
威厳のある声、話し方
癖のある立ち姿
大好きなそれが何も変わってない。
二人に飛び込んで抱き締めると、優しく抱き締め返してくれた温度は、別れるときと何ら変わりもなく、目の前が涙で滲んでいた。
良く顔を見せなさいと言われ顔をあげると
「随分大きくなったな!それに綺麗になったものだ。」
と、大きな手で優しく頭を撫でられた。
「父様はまた逞しくなったのね!母様は、変わらず綺麗でいてくれて嬉しい。」
父様はボルさんの方を見た。
「そちらがボルさんかね。娘の我が儘で乗せて貰っていたと聞いたよ。ありがとう。」
「いえいえ、最初は確かにお願いされましたが、結果いろいろ世話になってしまったのはこちらの方です!」
商船とあって、母様はボルさんとの商談が始まった頃、厨房から、宴の準備が整ったことが知らされた。
大皿を囲むように次々に赤髪海賊団とディルバリーカンパニーの皆が座っていく。
上座の高い位置に、シャンクスと兄上、父様と母様、ボルさんとエリさん、赤髪海賊団の幹部達が輪になって座った。
私はというとシャンクスと父様に挟まれて座っている。