第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
義久様の使令により、城に向かい、もうしばらくで城が見えるところである。
途中で、赤鞘九人男の者やその他多数と別れてここにおるは5名。
囮になって別れた者、途中で捕らえられた者の安否は解らない。
ただただ城と、城に待つおトキ様、モモの助様、日和様の元へと急いだ。
城がある前方ではバチバチと燃え盛る音が聞こえた。
空は夕日でもないのに赤々と染まり、森も何もかも燃え盛り、助けを求める人々の断末魔があがる。
民を守れないものの何が士族だ。
民を皆殺しにして私腹を肥やすことの何が侍だ。
怒りと虚しさ、情けなさが津波のように押し寄せる。
さらに進むと城は既に炎の中にあった。
「おでん城が!」
「もう手遅れなのか!?」
ザザザっと人の気配がして振り返る。
「諦めるでない!炎など切って切り裂いて前へ進みましょう!!」
「紅條桜殿!!」
「御三方は、あの中で生きて待っておられる!おでん様のご子息であらせられますぞ!
いるとすれば一番頑丈な地下におるでありましょう。」
そして我らはおでん城へ向かった。
「おトキ様!モモの助様!日和様!」
城へ着くと総出で地下へ急いだ。
火は切れても、煙は消せぬ。
城はいつ崩れ落ちてもおかしくない状況。
それでも、火や瓦礫を切り裂きながら前へ前へ進んだ。
「おトキ様!」
地下の防護の間にたどり着くと、負傷した者も、御三方の側に居たものも含め20名くらいの家臣が待っていた。
「桜か!これで共に来たものは揃いましたか?」
「共に来たものはここにおる6名!あとは皆オロチに捕らえられたか、囮になり別れ申した!
我々の非力で殿も民も守ることができず、面目次第も御座いません!!」
錦えもんはゴツンと床に頭をつけおトキ様に謝罪なされた。後ろに控える者達も号泣しながら土下座している。
「頭をお上げなさい。そなた達はようやってくれました。
悪いのは黒炭オロチ、カイドウよ。
これから話すのは私からの最期の話よ。」
皆は手を付いたまま、おトキ様の御言葉に耳を傾けた。