第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
「....来た!」
黒炭の家紋が入った幕の間からオロチの家臣に紛れて海賊の手下であろう者も入ってくる。
あたりはざわつき始める。
黒炭オロチ、カイドウも続いて入ってきた。
勝ち誇った姿は誠に腹立たしい。
二人は磔台の前に腰を据えた
その後ろに髷を下ろされ、傷や痣だらけの御姿で我らが主君、光月おでん様が入ってこられた。
よくもまぁ、戦友と言うておったおでん様を....。
ギリリと奥歯が鳴る
これほど、腸の煮えくり返る思いをしたことがない。
某の後ろで控えておるその家臣、赤鞘九人男の啜り泣く声が聞こえる。
「皆の者、堪えよ。拙者とて気持ちは同じである。」
目の前では、おでん様を磔柱に括りつけ、その柱を立てるところ。
見てられぬ。
話で聞いたが、連れていかれてから睨み付けるだけで質問には何一つ答えなかったという。
我ら家臣、家族を守っての事であろう。
それで、あのようなお怪我を.....。
もう少しだ。
「光月おでん。罪状、開国政策により国家転覆を目論んだ、国家転覆罪により、磔、火炙りの刑にを只今より執行いたす。
光月おでん。遺言があるなら申せ。」
ギロリとオロチとカイドウを睨み付け、
髪の隙間から見える口元がニヤリと笑った。
「我死すとも、我が志は死せず。
愚者は勝とて、愚者は栄えぬ。
我が友、我が血族、滅びても
意思を引き継ぎ、成すものが現るる。
愛しきワノ国
愛しき九里
そして民、家臣、家族
某が愛した者達よ!
自由に思うがまま生きよ!
いい人生であった。」
何という御言葉....。
おでん様らしい。
我ら家臣には解ります。
伝わりましたとも。
栄える国は破壊者には築けぬ。
自由に思うがままと言うのもそういうこと。
「はっ。戯けを。火を放て」
そういうと、火棒を持った男が油を撒いた地にそれを放った。
火の手が上がり、弓を引く音多数。
我が吹き矢隊に合図を出すべく石を磔柱の上部に向かって放つ。
すると、弓を構える部隊の頭に毒針が次々と刺さり、バタバタと倒れた。
次に我が覇王色を放ち大半を倒した。