第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
結局あれから3時間ずっと休まずに手合わせは続いた。
幼い順に足が動かなくなり、地に倒れこむと押し寄せる疲労感に負けてそのまま夢の中。
昼下がりの日が照りつける中、森の入り口の木陰に3人とも大の字で寝ている。
「寝ている姿は、まだまだ年相応だな。」
「あぁ。しかし、何もかもが規格外だった。
とても驚いたよ。
彼らは間違いなくこれからの時代を引っ張っていく存在になるだろう。」
「そうだろうなぁ。」
男二人、
バーから持ってきた酒を酌み交わしながら、目の前の子供達を見ていた。
さらさらと木々の葉を揺らす風が幼い3人を優しく撫でて去っていくと、気持ち良さそうに微笑んだ。
「ん.....。」
ユリが寝返りを打つと白い肌と漆黒の髪の境が表れ、そこに滲んだ汗が艶やかに光った。
艶のある柔らかい黒髪は日の光に照らされて美しさを際立たせる。
「宝石みたいだ。」
大事なものを扱うような優しい目を向けたシャンクスは、その大きな手でユリの頭を撫で呟いた。
「まだこれからの原石だ。
うちの娘に手出すときは、それなりの覚悟でな。」
フッっと横目でシャンクスを笑いながら酒を流し込んだ。
「3歳のチビだぞ。
もう立派な父親だな。レイさん。
まぁ、覚えておくよ。」
半ば呆れ顔のシャンクスは、レイリーが言うことを本気にしたかのように言葉を返した。
「ハハハ。まだ、昨日会ったばかりだというのに、私もたいがい、浮かれてるな。」
幼子にも関わらず、3人の容姿や心、身体能力はまた海の男の心を引き付けたのだった。