第6章 死者の声
「うぁぁぁぁあああああ”あ”だっ……!!」
「………ったぁ…」
でけぇ音と目から火花がでるような衝撃が…。
い、いてぇ…
意識が…これは、現実か?夢か?
「......」
「......」
し、視界が…開けてくる。
あれ、俺、何してたんだっけ…
「ぃ…っ……」
今起きたことが、目の前で額を押さえてうずくまってる白衣の色っぺぇ女の様子が物語ってる。
状況が読めねぇ…
あれ…
「起きたんだ…大丈夫?痛いところないですか?」
「あ、あぁ…」
まだ痛むらしく痛そうに片目をつむって、後ろのテーブルに手をついている。その後ろには花瓶が倒れていて、水がテーブルを伝って、床に滴ってる。
「ごめんなさい…おでこ痛かったですね。わたし、呼吸の確認しようとして…」
「わりぃ…。いや、おめぇの方が痛かっただろ。」
「大丈夫。ごめんなさい」
悶絶している女と目が合った。
ほんの一瞬。
「ふっ…」
「っく…くくっ」
目が覚める前の暖かい空気感を感じたんだ。
この女から。
なぜかは知らない。
柔らかに笑う女は、ベッド脇にある椅子に腰かけて、もう一度俺の方を見た。
「思ってたより元気みたいで安心しました。一緒に居たデュースさんは、他の部屋にいますよ」
そこまで言われて、やっと思い出した。
「そうか。お前が助けてくれたのか?」
「まぁ、そんなところです」
時間が経つにつれて鮮明に記憶が戻ってくる。
大荒れの海で俺とデュースが船ごとひっくり返って"カナヅチ"になった俺だけ沈んだんだ。
状況が状況だ。
助からねぇって思ったのに…。
「ありがとう。デュースの事も」
黒い髪に引き立てられた白い肌に印象的な目は、笑うと細まって穏やかに笑う。
その笑う顔に妙に惹き付けられて、胸ぐらを捕まれた気になった。
「わたしが、そこ通ってなかったら命なかったですよ。あなた、悪魔の実食べたばかりでしょ?」
「オメェ…悪魔の実って知ってんのか」
「そういうの食べた人がうじゃうじゃいるようなところで育ったから…」
あの状況で俺を助けたのがこの女だとしたら強いんだろう。優しい様子でふるまっちゃいるが、話し方や所作、醸し出す雰囲気がただ者じゃねぇことくらいは察した。