第6章 死者の声
目にも見えない速度で怪我人を抱えて飛行する。
懐から小型でんでん虫を取り出した。海に入ったからか、小型でんでん虫は元気がない。
「通じるかしら…」
そう思いながらもこれから行く船に電話した。
ぷるぷるぷるぷる
がちゃ。
「はい。隊長。イーストブルー支船医師のセナです。」
「セナ。溺れた遭難者男性を救助したんだけどぐったりしてるの。今特急でそっちに向かってるから、準備してもらって良いかしら。
あと一人同乗者がいて、今一緒に来てるの。
そちらの方は意識があって意思疎通がとれる。
部屋を一室開けておいてくれると助かるんだけど...。」
「はい。承知しました。」
セナはエデルと幼馴染みで同じルケドニア王国の生き残り。
寡黙なお姉さんだけど、心優しく気立ての良い人だ。
畏まった口調だけどホントは仲良くしてもらってる友人でもある。
殆ど、オンラインでしか会話してなかったから、楽しみで仕方なかったんだけど、まず後ろの患者さん。
「火竜、デュースさんぐったりしてるからスピード緩めて。わたしは先に行くから。」
船に着くと、そこには既に患者を医務室に運ぶための担架が用意されており、セナがすぐにでも処置ができるまでに準備してくれていることが解った。
船にいた乗組員により、ユリの背にいたエースを担架の上に乗せると早急に運ばれていき、それに続いて咲に積んだ荷物を担いで彼女自身も医務室に向かった。
セナも共に処置に向かおうとしたので、指示を出す。
「わたし一人で大丈夫よ。脈も全て安定してるし、頭を何かでぶつけて脳震盪起こしてるだけかもしれないし。後から来るデュースさんの出迎え、よろしくしていいかしら。着替えと暖かいスープを用意してさしあげて。」
「承知しました。」
セナが来た方向へと駆け出す。船内は二人の遭難者の受け入れに慌ただしくなっていた。
「隊長。お願いします。」
医務室に通されたユリは白衣に着替えなおして、”患者”の処置を開始した。