第6章 死者の声
それからしばらく飛んで、現在、”美しい島”シスクスの近く。
さっきから咲の様子がおかしい。
鳥はもともと、身の安全のために危険なところを避けて飛ぶ。が、今の咲はどこか酷く焦っている様子で風が強く吹く方へ向かっていっていた。
いつもは安全な空路を選んで飛んでくれる筈の咲。
初めは様子を見守るも、ぐんぐん風の渦の中へ向かっている。
暫く待ったけどとうとう危ないところまで来た。
「咲!!どうしちゃったの!?そっちは嵐じゃない!」
するとチラリとわたしの顔を見てわたしの中に訴えてきた
_____トモダチ!
_____タスケテクレタ!
_____________ボクガタスケル!
咲の命の恩人で友達?!
それを聞いてしまって、相棒なら止めることはできない。
しかし、
「咲!あなたの気持ちよくわかったけど、こんな嵐でここは海の真ん中よ?
あなたは海には入れないのよ?」
______…。
咲からは悲痛な気持ちが伝わり、わたしはそうじゃないと切り出した。
「その恩人さんは人で間違いないのね?
なら、わたしがその人を助ける!
さぁ、早く!」
キィーとけたたましい鳴き声をあげた咲と共に嵐の雲の渦に突っ込んでいった。
猛烈な風の中、風を受け流しながら迷いなく一方向へ突き進む。
当然、自分のからだは、咲から風に引き剥がされそうで、前傾姿勢で思いきりしがみついた。
雲を抜けても視界がわずかに晴れただけの大荒れで、平和の象徴とも言われるイーストブルーの何は似つかわしくない光景だった。
風に耐えるなか、目標を探そうと視線を少しあげると、
炎を動力として走り抜けるボートに男二人の影がそこにあった。
男のうち一人の足が、異常に燃え盛っていたことで、ある推測が生まれた。
彼は火の能力者であること。