第6章 死者の声
「グランドラインに行くこと自体はそう難しい事ではないはずよ。潜水艇なら、不要な戦いに巻き込まれないし、ローには前半の海を十分に渡りきれるだけの実力はあるから。」
「当然だ。お前は仕事でもして待っていればいい。すぐに追いついてやる。」
言われなくとも、そのつもりでいる。前半の海でくたばるわけにはいかないと思っていたが、自分よりも実力もあり、新世界でも名をはせるユリに行けると言われたことに口角を上げ白い歯を見せた。
「あんまり遅いと先行っちゃうからね。」
悪戯に返された言葉に乗っかるように「それは気をつけねぇとな。」と返す。
「聞きたい事はそれだけ?」
「仲間にはなる気はねぇんだろ?」
「当然。船長であるあなたの拍がつかなくなるじゃない。」
あっけらかんと当然のように断られるも、ローにしてはやっぱりなと笑みを浮かべている。
そう返されるのを楽しんでるように。
「情報代くらい貰ってくれ。これからも頼りにしてる。」
目の前にベリーの束が置かれた。医者の腕も、戦闘力もここらの海では確かなレベルである”彼ならでは”のこの額であろう。正直、確信にもつかないことしか教えていないのにこの額は多すぎる。そもそもお金が欲しくて情報を渡したわけではない。ユリにとっても、ローとのこういった話も将来の人脈の為だ。
「いらないわ。わたしもその情報は人に調べさせたものだから。」
「白ひげんとこで教わらなかったか?男が差し出したもんは素直に受け取っとくのが、イイ女の流儀だと。」
「イイ女だって思ってくれてるの?」
「アァ?」
わざとらしく頬杖をつき足を組んで、それらしい表情にしてみせたユリ。対してローは、帽子のつばを抑え込むように顔を隠しているが、隠しきれていない耳が心なしかほんのり
赤い。
「わかった。そこまで言うなら受け取っとくわ。ありがとう。」
「あぁ。.......送る。」
ユリに視線をよこさず、先に席を立ったロー。会計も雑に多めの金額を置いて店を出る彼の後ろに続いた。