第6章 死者の声
「時が来たら最初に奴を引きずり落としにグランドラインに出る。
その日のために情報が欲しい。」
奴というのは七武海に属する海賊、そしてドレスローザの国王をも務めるドフラミンゴのことだ。
最初に会った時、スパイか何かかと疑われてこの目を凝視されたことで彼の過去のおおよそを知ることが出来たし、それで発作を起こしてしまって全てを話す羽目になったことがあるから
名前を伏せて話しても話が通じる。
「一筋縄ではいかないわよ。もっともっと強くなって、世界を相手にできるくらい強大な力と権力を得ても、根っこはもっともっと深くて厄介なものと考えたほうがいい。」
「どういう意味だ。」
「彼を倒せば、もっと強大なものが刃を向けるし、それを倒せたとしても、もっと強大なものに追われなければいけなくなる。」
抽象的な言い方をしても、頭がいいこの男には充分理解が出来るとユリは思っていた。その証拠にローは難しい顔をしてこちらを向いている。
七武海の男よりも強大といえば、四皇。それより上となれば、海軍か世界政府というところ。
そこに挑もうとしている目の前の男はそれを言っても止まれない理由があることは承知していた。
「仮にあなたが死んだあと、仲間にそれを背負わせる覚悟があるか。それに契約でも一時的にでも他と組んで共に挑む協調性も必要になってくる。」
「それがお前が感じたことか。」
「裏もうちの会社でとっている。企業機密だからその件は言えない。だけど、本当に危険だから、本当にやるのなら用意しすぎても足りないくらいだと思って。」
伏目で視界の自分のグラスを手に取る。カランと冷たい音が場の空気から緊張感を高めていく。
「敵は誰だ。」
「詳細はあなたが、グランドラインに入ってからにしましょう。順番は一つずつ踏んでいくものよ。
こっちの仕事と被ったらこっちから会いに行くから。」
ローは言葉が足りない中で集めた情報から、自分の目的とユリの目的が重なるのではないかと仮定した。
最終的な目的は別にしても、そこを通過していくための共通の敵がいるのではないかと。
そしてそれは、他人が用意した空間故に話せない事ではないかと踏んで、ここでは聞くことをやめることにした。