第6章 死者の声
「もう行くのか?」
「えぇ。寄りたいところがあるの。父の友人の故郷よ。ローグタウン。」
「来い。」
がっちりエデルが抱き寄せて、お互いに背を2回叩くようにして活力を入れる。
試合に出る前の選手を見送るのと同じで、これがエデルとわたしにとって戦場へ向かうときの儀式のようなもの。
「無事で帰ってこい。そのあとは暫く養護施設の見回りだ。」
「エデルも。ここをよろしくお願いします。」
「ずいぶんこの短期間で成長させてもらったな。今の表情は隊長らしい。」
「ええ、彼には感謝してる。
だけど、もう、会うことはないわ。」
「ユリ………。」
「ふふ。何て顔してるの?
なにも心配することはないわ。」
「ならいい。」
「有難う。行ってきます。」
「あぁ。イーストブルーの者たちによろしくな。」
ユリはふわりと微笑むと、咲の背中に飛び乗って、大海原の果てに飛び立っていった。
次なる任務はイーストブルー、シクシス近郊への通行補助、そして護衛。荒れ狂う時代の舞台である大海原の上を愛鳥に身を任せて突き進んでいった。