第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
レイさんは、ヨシタカを追いかけて行った。俺に女の子を回すとは.....。
加減がわからん。
まぁ、追いかけるのは速く、竹刀は軽く振るくらいでいいのか?
加減をしすぎるのは、彼女達の意に反するだろう。
とりあえず、お手並み拝見といきますか。
年齢より遥かに優れた脚力なのは、走っていく様子でわかった。大人になればどんなもんだろうか?
それでも、二人にすぐに追い付いた。
ユリの後ろに着く寸前に、体を翻して、ひょいと向きを変えて逃げていく。
「おぉ!なかなかやるじゃないか」
正直加減は少ししている。でもなかなかの身体能力。
俺の言葉に笑う笑顔は子供と思えないくらい綺麗だ。
おっと集中。
ユキ野方に方向転換。ヨシタカやユリよりは遅いがそれでも常人の域を越えて速い。
なるほど。
これをおでんさんが見てたわけだ。
子ウサギのようにピョンピョン跳び跳ねていく姿を追う。
その走り方は目隠しなんてしてないだろと思うくらい躊躇がない。
それはいくら俺でもできる自信はない。
体力と身体的な成長、力が育てばまだまだ延びるだろう。
いい意味で末恐ろしい。
目の前にいるユキに振りかぶるとすっと交わして、体を傾けた方向に走り出す。
加減を緩めるか。計算外だった。
今度は回り込む。
竹刀を振り下ろすと頭にクリーンヒット。
ユキは尻餅をつき口はへの字に曲がった。
「そんな顔するな。可愛い顔が台無しだぞ?」
「ユキはかわいいです!」
「そうだな!」
はいはい。どんな顔しててもかわいいでーす。
ユキは起き上がるとまた走り出した。
俺は方向を変えてユリの方へ走る。
すぐに目の前のところまできた。
間合いも入れずに振りかぶるとくるっと向きを変えて、竹刀を受け止めた。
「お!いい腕してるじゃないか!」
「まだまだ、うけみしかできませぬ!」
「今はそれで充分さ。俺が教えてやるよ。」
「うれしゅうございます!よろしくおねがいいたします!」
受けはしたが幼女には力がまだまだで、竹刀が手から滑り落ちる。
すぐにそれを拾って俺の脇をすり抜け走っていった。