第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
手合わせの日
着いた無人島は
島の回りを森が囲い、その中心部分が広い草原となている。
村があった跡らしい。村はその昔業火を伴って焼失という。
足場は良好だ。
手合わせ、修行にはもってこいの場所である。
シャンクスと師匠もここに鍛えに来るらしい。
まず、手始めに、シャンクスと師匠からどれだけ逃げて竹刀による攻撃を避けられるかである。
いわば、鬼ごっこのようで、タッチの代わりに竹刀で叩かれるもの。
ただ、叩かれても足が悲鳴をあげるまで止めないという。
我々の方も竹刀を持つが、それで交わしたり避けたりすることもできるというルール。
親父達から聞いたであろう、我々の見聞色と足の速さを確かめたいそうだ。
そのため、3人とも目隠しで黒い布を巻いている。
「それでは始めるとしよう。数を数える間好きなだけ離れなさい。」
数を数え始めたのを確認してから森の方へ逃げだした。
岩も段差も大地の裂け目もなんのその。
暫くすると、光のような速さで師匠が飛び込んできた。
バシンと大きな音を立てて竹刀がぶつかり合い、某の竹刀が飛ばされた。
「私の速さで、竹刀をしっかり当てられるとはな。
しっかり見えているようだ。あとは力が足りれば受け止められていたぞ!」
「はい。努めまする!」
竹刀を取りに行って再び逃げる。
しかし、師匠はもう後ろ。
クルッと向きを変えて小さいからだを駆使しスルリと脇を抜け右折して交わし再び逃げる。
体制が整わないうちにまた師匠が迫るので、竹刀を両手で構え受け身をとった。
バシンと乾いた音が響く。
「噂どおりだ。7歳とは思えんな。
育てるのが楽しみだ。」
「有り難う御座います。」
まだまだやるぞとさらに追いかけてくる。
正直最初から全速力。
師匠は本気に走らなくても、簡単に追い付いてくる。
これが、海を征した男の右腕の速さ
この人から学べるのだ。
おでん様に感謝しきれぬ。
あれから、師匠(レイリー)に、外では一人称を"俺"にし、語尾のござるを改めよと言われてしまった。
侍であること、紅條の者であることの発覚を免れるためだ。
慣れ親しんだ言葉はなかなか変えられない。
でも、彼の名を背負って生きていく限り、故郷の言葉はワノ国に行くまでこちらの言葉に合わせよう。