第5章 赤い腕章
「エデル。ユリです。ただいま戻りました。」
ドアをノックして、中にいるはずのエデルに呼び掛けると、ガタンという音と、急いでこちらへ向かう気配を感じた。
「よく帰ってきたな!待っていたぞ。」
エデルにしては勢いよく開いたドアと、嬉しそうな表情を浮かべた顔にこちらも嬉しくなった。
「話は聞きました。わたしの留守中、みんなを守って戦いを指揮してくれてありがとう。」
「ユリが帰ってきてくるのを、皆と待ちわびていた。元気で何よりだ。」
家族の再会を喜び合うように、わたしを向かえてくれるかたちで3人で強く抱き合った。
そしてエデルが顔をあげ、話をきりだす。
「アンナも部屋に入ってくれ。まずはコーサノストラの件でミゼルから最新情報が入ったことと今後のことを話しておきたい。」
促されて室内に入ると、ボルさんと、エデルの秘書ラズ・ガルザもいた。
「やぁ、元気で帰ってきてくれて何よりだ。修行に行っていたんだろう。疲れはないか?」
「ボルさん。ただいま戻りました。今回は休暇をいただき有難うございました。」
「ユリちゃん、ずいぶん話し方、立ち姿が凛々しくなったね。また一段と成長したようだ。」
「えぇ。また戦いでも修行の成果をお見せするのが楽しみです。」
「あぁ。楽しみにしてるよ。その件だが、前半の海からのミゼルからの情報が、僕とエデルの方に入ってきた。
エデル。説明を頼むよ。」
「畏まりました。」
壁一面のモニターに明かりがつき、部屋全体の証明は暗転した。
モニターに写し出されたのは前半の海とイーストブルーの海図。そして、コーサノストラ海賊団と表記された三角の赤い印。
そして彼らの被害にあった島を×、我々ディルバリーカンパニーの支社支店があるところは青いロゴで書かれている。
エデルはモニターの前へと歩み出る。
「ミゼルからの情報だがたった今入った。コーサノストラ海賊団は水面下で勢力を巨大化させながら隠れるようにして前半の海を逆走している。
間違いなく四方の海どちらかに向かっている。
そして、そこから息を吹き替えしてくるという予測を、我々兄弟は詠んでいる。」
その場に居合わせたものの緊張が走った。