第5章 赤い腕章
海岸につき、別れの時。
「次、もしお会いすることがあっても、敵味方に関わらず、わたしの尊敬する剣士、そしてお師匠様であることに変わりありません。
あなたに教えていただいた、一緒に過ごさせていただいた1ヶ月を決して忘れません。」
「俺もだ。いろいろ世話になった。」
「教えていただける対価でございます。それでも足りないくらいミホーク様に大事なことを沢山教えていただきました。」
「主が満足ならそれでいい。達者でな。」
「はい。ミホーク様も。
本当に
有難うございました。」
いろいろ思い起こされて涙が出るのをこらえ、笑顔でそう言いきった。
鬱蒼と生い茂るシッケアールの森に向かって呼び笛を吹く。
召喚された咲の大きくなったからだがユリに背を向けた。
ミホーク様に背を向け、その背中に向かって歩みだした刹那
「ユリ………」
強い力で引き戻され、気付けば強靭で大きな腕の中。
ふと見上げれば、待ってたかのように後頭部を引き寄せられた。
抑えていた本心をぶつけるかのように貪るような口づけに息も忘れてしがみつくようにそれに応えた。
もうこれが最後だと思い知らされて涙が止められない。
何度目かのキスが繰り返され、優しく引き離し、わたしを胸に抱いたまま鋭くも熱のこもった視線でわたしを見た。
「主が生きていればそれでいい。前を向き続けろ。
ここへは二度と来てくれるな。
お前をここから出せなくしてしまいそうだ。」
「ミホーク様…………」
"じゃぁ出さないで"って言えたらわたしはそれで幸せなのかな。
いや。違う。
わたしには、守りたい人たち、愛し合いたい家族や仲間がいる。
そして、ミホークとはどんなに愛しても道は決して交わることがない。
それはもう解りきってる。
同じ道は歩めない
でも、
「ここでの事、あなたと愛し合えたこと夢のような幸せでございました。
あなたとお会いすることはなくとも、立場が敵になったとしても、ここで起きたこと全て後悔するようなことは何一つありません。」
最後だ。
これが本当に最後。