第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
当然と言うべきか
手合わせを願い出たのはヨシタカの方だった。
「拙者は休んでいる暇はござらぬ。もし都合がよろしければ、明日からでも稽古をつけて戴きとう存じます。」
「それは楽しみだ!俺もヨシタカの力量が知りたい。
レイさんにも頼んだのか?」
「はい。それが筋ですので。」
あぁ。そうだ。
子供とはいえ、キチンと弁えている。
態度も返答も清々しい。
なかなか好戦的だ。
「ユリもおねがいしとうございます!」
「ユキもおねがいしとうございます!」
おぃおぃ、まだお嬢ちゃんは2~3歳だぞ?
しかも、こんな可愛い人形みたいな子、どうやって相手すりゃぁいい?
でも、無下にするわけにはいかない。
「お、おぅ!いいぞ。」
見聞色と足の速さが自慢の兄妹。避けることくらいはできるかもしれないな。
そうだ。ここは人拐いの多い地域で無法地帯。護身術くらいからなら教えられるかもしれない。
俺はハタチになれば海へ出る。
それまであと一年半。
こいつらに教えられることとはなんだろう。
してやれることはなんだろう。
俺は俺なりにこの子達の力になりたい。
いつか、あの国を取り戻す戦いがあれば一緒に戦うのも悪くない。
今はこうやって、レイさんと一緒に手合わせをしたり、一人である程度海を渡るための勉強に付き合ったりすることからだ。
手合わせは明日の明朝出発。ここから近く海軍もいない無人島にて。
武器は竹刀。聞いたところヨシタカは手裏剣も扱えるらしい。
これは是非見てみたい。