第6章 死者の声
「エース、やっと来たのか。具合はどうだ?」
「おう、心配かけちまったな。
デュース、俺がいねぇ間に楽しそうだったじゃねぇか」
「いや、それ嫌味だろ」
げっそりとした表情をみて思わず笑ったほどだ。
「ごめんなさいね」と女が言えば、頬を少し赤らめたデュースが謙虚に否定する。
なんだ。コイツはこの女の事を少しは知ってるんだな。
丸いテーブルを囲むように3人席に着いた。
食堂の外から俺たちを見る視線がいくつもある。
警戒するようなものでもなく、どちらかと言えば好奇心からのようだった。
「エースさんも目覚められて、お二人とも元気みたいで安心しました。二人とも、診察しましたけど、異常はなかったので、以後、普段通りにしていただいて大丈夫ですよ」
「いやぁ…マジで死ぬと思った。感謝してるよ。『さぁ、一緒に海賊やろう』って島を出てすぐに終わるのかと思った。エースは金づちで真っ先に沈んじまうしよ」
「シャレにならねぇな…。いや、ほんとお前には感謝してるよ」
「いえいえ…。災難でしたね。でも、命あって良かったです。」
女の何かに気づいた視線と入口からバサバサと羽ばたく音が聞こえて、そっちを向くとテトテトと音を立てながら女を追いかけてくる一羽の鳥。
目は鋭いものの、こっちに敵意を見せることなく、女の足元にたどり着くと、「おりこうね。ちゃんと羽ばたかないでこれたね」と、その鳥の頭を撫でてやり、抱きかかえて女の肩に乗せてやる。
女から醸し出される雰囲気にその鳥が肩に乗れば、更に強く見えるってもんだ。
海には、海賊でも海軍でもないのにとんでもねぇくらい強い奴がいるもんだ。
海って広いもんだと、あらためて思い知らされた。
「この子、咲って名付けて、一緒にお仕事してるんです。今回あなたたちを見つけて助けて欲しいってお願いしたのもこの子で…。
あの…この子、エースさんの事を知ってるみたいなんだけど、何か覚えてることってないですか?」
「俺を?」
急に知らされた事実に驚かずにはいられなかった。
鳥がさっきから俺の事をジーっと見ている。
___ボクを助けてくれたでしょ?
覚えてるよ。
また会えて、君を助けることが出来て
ボクは嬉しいんだ。_____
脳に響いてくる声、感覚…
たしかに、これは…
身に覚えがある感覚だ。