第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
船はシャボンディー諸島に到着した。
ヤルキマングローブの森。
その根から深海に潜れるほどの強度を誇るシャボン玉を発生させるという。
13番グローブは無法地帯と呼ばれるが、そこにシャクヤクの店があり、そこにこの二人は住んでいるという。
シャクヤクの店がある辺りに来ると一人の男が立っている。
ここのもう一人の住人らしい。
麦わら帽子の下に赤い髪。
白いシャツは胸元が見えるくらいにボタンが開けられている。まだ青年の域には達していないであろうその男。
「シャンクス!留守を任せてすまなかった!」
「いいんだ。レイさん。そいつらが、おでんの家臣の子か?」
「あぁ。」
男は我々の前に立ち麦わら帽子をとった。
人懐っこそうな表情で目線を合わせようと屈むと
「俺はシャンクス!俺も暫くここで世話になってんだ。よろしく頼むよ。」
といって二カッと笑った。
「ヨシタカでござる。宜しくお願い致します。」
某はその時、どうしてか説明はつかないんだが、いつか彼の下で海を渡ることを想像したのだ。
レイさん達がおでんの家臣の子を引き連れ帰ってきた。
3人はここに来る途中で買いそろえたであろう服や髪で違和感のない姿で現れた。
それにしても、聞いていた年齢より遥かにしっかりした顔立ちで姿勢もよく、凛とした姿は、俺のよく知る侍の姿そのものを見るようだった。
なんというか美しい。
それでも、この3人は、予知夢という現実するという悪夢と戦い、初めて鎖国国家から海へ出て、初めての海賊に出会い、初めての戦闘を目の当たりにし、.......
初めてばかりで気も休まれない時を過ごしてきたんだろう。
しかしここまで彼らを連れてきた連中は、敵だが信頼できるし、おでんさんに縁のある海賊達。
きっと良くしてやったに違いない。
逃れられない国の危機のために、希望を託して国から逃がした子供達。
しかも我が子の代わりに家臣の子。
話から聞くと、強くなる素質は充分ある。
早くおでんが認めたこの子らの実力を知りたい。
一つ手合わせでもやってみようか?