第5章 赤い腕章
わたしは思わず顔をあげてミホーク様を見た。
どういうつもりで今それを?
知ってて言ってくれるの?
ワノ国の文豪が遠回しに愛を語る時に使ったと言われるその言葉。
医学書だけじゃなく小説などの物語を読むわたしが知らないはずがない。
でも、博識そうなこの人なら知ってる可能性はあっても
もし知らないで話していたら………。
時間にしてほんの一瞬の事かもしれないけど、その間にいろんな考えが浮かんだ。
勿論、一番の言葉は「死んでも良いわ。」
でも、もしわかっていってたとしても、わたしが死をこの人の前では言いたくない。
解ってても、解らなくても、わたしの心に一番しっくり来る答えとして
「あなたと最後に見る月ですから………。」
と伝えた。
「そうか…。」
その反応は解ったって捉えてもいいのかな。
ミホーク様がわたしを見て優しく笑ってくださるの。
思わず、溢れだしそうな涙を見られまいと席を立ち、テーブルの上の自分のグラスを片付ける。
「今夜、部屋へ行ってもいいか?」
やっぱり解ってたのかな?そういうつもりなのか昨日のようにしてくださるのかよく解らない。
だけど、わたしも夜にお呼びだてするつもりだったからそう答えた。
「えぇ、色々と準備がございますので、終わったら咲を寄越します。」
「…………?わかった。待っている。」
食器を片付けた後
わたしは自室に戻り用意して、咲くに乗って上の階の部屋へ向かった。