第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
その後、この一ヶ月で知り得た我々の情報をレイリーに引き継ぎをしたり、荷物を家具以外レイリーの船に移す作業にはいった。
荷物は案の定多すぎたので少しばかりモビーに置いていくことになった。
翌朝、慌ただしく島を出ることになっている。
魚人島ではレイリーを快く思わない者が多いからである。
見送りには白髭海賊団みんなが駆けつけてくれた。
「親父!短い間であったがお世話になりました。帰りの道中どうかお気をつけて!」
「とうさん!マルコ!みなさま!おせわになりました。
マルコ!せんせいとして、またこちらにきてくださいまし!」
「またおあいしとうございます!」
大きな声で見送りに声をかける。
白髭海賊団の中には泣いているものも少なからずいた。
「いっぱいレイリーに甘えろぅ!ヨシタカ、ユリ、ユキ!
風邪引くんじゃねぇぞ!」
「勉強また付き合ってやるよぃ!」
「ユリ!治療してくれてありがとうな!皆元気でやれよ!」
気がついたら妹達は目が真っ赤で、一生懸命涙を堪えていた。
その後ろでは、シャクヤクが二人の肩を優しく抱いて見送りの者達を見ていた。
「短期間でこんなにも慕われちゃったのね。
良い子達を授かったものだわ。」
操舵手兼航海師役はレイリー。
船はどんどん魚人島から離れていった。
皆が見えなくなると、とうとう某も涙が溢れて3人で泣いた。
驚いたものだ。礼儀礼節はあの国の侍の子ならばそうだろう。
しかし、あの海賊団のほぼ全員に好かれているようだ。
この子達との別れを惜しんで泣くものは多かった。
普通ならば、縄張りを侵してまで幼子を船に乗せに行くともなれば、いくらなんでも渋るものも多かったであろうに。
でも、今この子達を目の当たりにして、少しわかった。愛想が良いし容姿もそこそこ。それぞれ得意分野を持ち合わせているようだ。
強い見聞色を持ち合わせているのに警戒心がない。
すぐに人の心をよんでいるようだ。
あのおでんが自分の子供と同等に期待しているのだ。
普通の子供ではない。侍の子を侍として育てていこう。
おでん。
おまえを助けられない代わりに
希望の子供達を立派に育て上げるぞ。