第5章 赤い腕章
式紙には、七神それぞれの名前が独特の字体で書かれている。
その紙の文字を見たであろうミホーク様の表情は不安一色。
そして、わたしを抱き抱える手に力が入ってて少し痛い。
それはそうでしょ。
わたしだって始めての試み。
でも危険だけど利に叶っている。
そう。わたしは、普通の人なら死んでしまうことを自らやってのけようとしている。
それも明確な生きたいと言う意思をもってだ。
でも、
それでも
ここに来るまでのわたしと世間が見る彼は
何事にも動じない冷静沈着で、
心は氷のように冷たく、
いつ斬られるか解らないそういう印象。
だけど、今は、いや、ここに来てから
それは本の一部しか見ていなかったって凄く解ったし、
心力を認めた者、そして敵対心を抱かない者には真正面から向き合って優しい人。
そして、その冷静沈着で何にも動じることがないはずのその目が、その瞳から感じた心の奥が、わたしの命の灯火ひとつで揺らいでる。
いろんな人の、心を見てきたから、それがどう言うことなのか解らないわけない。
何でだろう、嬉しいって思ったの。
鉄壁の鎧を纏う普段ならまだしも余裕の無いその瞳の奥なら、いくらこの人でもその気持ちはわたしのこの目で読み取れてしまう。
だけど、不思議とそこまで大切に想われてると知っても嫌だとか身の危険なんて感じはしなかった。
ミホーク様が選んだ場所は、少し開けた広いレンガの道。
わたしはそこに下ろされた。
「白衣と刀、そして首にあるペンダントは持っててください。
万が一燃え尽きたとき、体が回復しても、それらはどうにもなりませんから。」
「わかった。終わったら知らせを寄越せ。」
「わかりました。
咲、ミホーク様をお願いします。」
キーと鳴き声をあげて空に高く飛んだのを確認した時、目を閉じて大きく深呼吸した。
「式紙七神!ー火竜!!」
ゴオォと竜の形をした炎は主人を見た。
「火竜。我を包み、纏う氷をとかしなさい。」
火竜は一瞬躊躇ったが、主人の言う通りにした。
声ひとつ漏らしてはいけない。
一瞬で終わるし大丈夫と言ったんだ。
わたしは覚悟を決めて目を閉じた。